bankruptcy:カードローン問題
銀行によるいわゆるカードローンが拡大するとともに、多重債務問題が再燃する兆しが出ている。
自己破産の件数が再び増加に転じたというニュースが前にあったが、その原因となっているのがカードローンによる無担保無審査貸し付けの拡大である。
日弁連が2016年9月に「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書pdf」で問題提起をしているし、これを受けてか「銀行のカードローン残高急増 規制対象外、金融庁調査へ」と報じられたのが2016年12月。
銀行の消費者ローン貸付残高が急増している。5年間で1・5倍超となり、2015年には消費者金融などの残高を抜いた。多重債務問題で消費者金融の貸出額には制限がつけられたが、銀行は対象外。日本弁護士連合会は過剰な貸し付けへの規制を求め、金融庁は実態調査に乗り出した。

個人に無担保で資金を貸し付ける銀行のカードローン事業の拡大を受け、全国銀行協会は会員各行に融資の審査体制を強化するよう要請する。融資契約の際に利用者の年収、借入総額の確認を徹底することなどが柱で、返済能力を超えるような過剰な貸し付けを防ぐ。今週中にも全国の銀行に通知する予定だ。日銀の金融緩和政策を背景にした金利低下で企業向け融資の収益が減少する中、貸付金利の高いカードローンの残高は2016年末時点で5兆4377億円となり、10年末の1.7倍に拡大。個人の自己破産申し立てが16年に増加に転じた一因とみられている。(2017/03/12-15:29)
こうした動きの中で、経済評論家の銀行がどうしても知られたくない「カードローン」の大問題という記事が出ている。
この記事にはほんの少しだけしか触れられていないが、銀行は貸金業者を保証人にして貸し出している。このことは上記の日弁連意見書で以下のように明らかにされている。
国内銀行の個人向け貸出しにおいて,住宅資金以外の「その他ローン」のう ち,「カードローン等残高」は,3兆5442億円(平成25年3月)から5兆1227億円(平成28年3月)と,短期間で急増した。 これに伴い,大手消費者金融会社においては,貸付残高に比較して,保証事業残高が顕著に増えている。例えば,平成28年3月期,アコム株式会社では貸付残高(無担保)が約7582億円であるのに対して保証事業残高は約8857億円,SMBCコンシューマー・ファイナンス株式会社では貸付残高(無担保)が約7288億円であるのに対して保証事業残高は約1兆0798億円と,貸付残高(無担保)よりも,むしろ保証事業残高の方が大きい。
銀行本体は借り手が行き詰まっても、保証会社が入っていれば、直接焦げ付きは生じない。
他方保証会社となる消費者金融会社は、自分で貸せば総量規制を受けるところを、銀行ローンの保証とすればその規制を受けない。そして直接貸せば得られる金利を、保証料という形に付け替えて、取り立てにより債権回収を受ければ、事実上総量規制も信用調査もなしに無担保貸し付けを行っているのと同様となる。
つまりこれは貸金業法の脱法行為である。
このことは、上記の日弁連意見書でも言及されていた。
解釈論的には、貸金業法の潜脱となるこのような消費者を対象とした保証契約は、迂回融資とも評価できるので、保証契約自体を無効と考えるべきである。
このように考えれば、貸し手である銀行に対する保証債務が生じないのは無論で、保証債務の弁済により生じることになる求償権も、当然発生しない。
のみならず、貸金業法の趣旨を潜脱した銀行のカードローン貸付け自体も、かつて盛んに議論された貸し手責任論(レンダーライアビリティ)を今一度まともに取り上げて、例えば日弁連意見書にアンケート調査結果として出ている年収220万円の60代女性に500万円を貸し付けたとか、年収226万円の50代男性に960万円貸し付けたとかのケースでは、公序良俗に反し無効、元金部分の不当利得も現存利益なしとして返還不要とする解釈論が必要である。
はっきり言って200万円しか年収がない人に500万円貸し付けるなんてのは、やっていることは闇金と同列というほかはないのである。
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