action:香山リカがチャンネル桜を訴える
それだけに、ミソジニーを露わにする連中の標的にされることが多く、上記のブログ記事にもあるように、誹謗中傷は今に始まったことではない。
それが提訴に至ったのは、本業である医業を対象とした誹謗中傷に立ち至ったからという。
しかし代理人である小倉秀夫先生の目的は、ちょっと違う。
しかし、小倉弁護士の言葉を借りれば「カジュアルな極右勢力」が思いつきや誰かへの悪意、あるいはウケを狙ったビジネス目的で好き勝手なことを言い、真剣に生き、発言し、活動する人を傷つけたり貶めたりしている現状を、何としても変えて行かなければなりません。今回の提訴がその一助となることを願っています。
つまり、いわゆるネトウヨ的な誹謗中傷が蔓延する言論状況を、法的手段を通じて、正常化したいというのが真の目的であり、その意味では公益訴訟なのである。
以下は、公益訴訟一般の問題で、香山リカさんの今回の訴訟とは一応別に考える。
公益目的の訴訟は、原告個人の利益を実現することももちろんあるが、訴え提起、審理中の弁論、判決といった節目のインパクトとその内容により、波及的な効果が生じることで法状況を変えていこうとするものである。
別の言い方をするならば、一罰百戒という効果を狙うものだが、判決で言い分が認められること自体は必要条件ではない。判決の制度的な効力ではないし、判例としての効力というわけでも必ずしもないので、「一罰」は必要でないが、他方で根拠のない訴えではいけない。根拠のない訴えを提起して他人の発言を封殺しようというのは、悪名高きSLAPP訴訟ということになる。
もちろん名誉毀損が認められて勝訴するかどうかは、裁判所の判断に依存するものであり、敗訴したら直ちに違法なSLAPPとなるというわけでもない。この辺りは割り切りにくいところで難しいが、公益目的で波及効を期待した訴訟と違法なSLAPPとを区別する一つのポイントは、訴訟を起こしたのみならず、主張立証の内容について世間にアピールできるかどうかというところであろう。
もちろん世間も一様ではないのだが、人権とか、平等とか、公正とか、普遍的な価値観に正面から向き合える主張内容なのか、それとも差別であったり弱い者いじめであったり、いわゆるヘイトと総称されるような馬脚をあらわしてしまう内容なのか、そこがポイントとなる。
やや、実体的な価値観に依存した基準となってしまうが、実践的な局面では一方で憲法や国際人権法を根拠とする実定法の価値観と、他方で世間的に認められる良識と、このいずれか、あるいはいずれにも依拠した議論を立てざるを得ない。
個人の権利利益をめぐる法的紛争では、このような抽象的なレベルでの議論以前で大体は済むし、SLAPP訴訟もややこしい議論に至る以前のものが大部分だが、突き詰めていくなら、こうしたところにたどり着くことになる。
なお、途中にも書いたが、公益訴訟一般の話として勝訴するかどうかは問題でないと書いたが、その発端となった香山リカさんの訴えが根拠の無いものだと言っているわけでは全く無いので、いずれの方面も、その点、誤解なきように願いたい。
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