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2017/02/15

jugement:阪神タイガース優勝で単位あげるツイート事件

大学の先生が、学生のいたずらツイートについて訴訟まで提起するなんて、とんだ訴訟社会だとお思いの皆さん、判決文を読んでみるとよい。

大阪地判平成28年12月2日判決全文PDF

事実関係は、大学の先生が講義でパワポスライドに「阪神タイガースがリーグ優勝した場合は,恩赦を発令する。また日本シリーズを制覇した場合,特別恩赦を発令し,全員合格とする。」と書いたものを投影し、「かつては,阪神タイガースが優勝した場合,全員合格とするという教授もいたが,現在はそんなことはない。」と説明した。
ところがそれを学生がスマホで撮影し、「阪神が優勝したら無条件で単位くれるらしい」というコメントを付してツイッターに投稿した。

このツイートが話題を呼び、まとめサイト経由でBiglobeニュースやJ-Castニュース、そして産経サイトまでもが紹介し、騒ぎが大きくなった。
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これだけのことであれば、当該学生を学内的に厳重注意して、謝罪ツイートと削除の努力をさせれば良いところ、実際に当該大学もそうしたし、当初は当該学生も非を認めて「転載されたアフィリエイトブログひとつひとつに削除依頼をし,定期的に途中経過や削除依頼の結果等に係る報告のメールを原告に送信する」などと約束する文書を提出していたのだ。
ところが、その後、学生は報告をすることなく放置した。

それで大学の先生が弁護士に依頼し、内容証明郵便で削除依頼の状況報告を求めると、受領しないで返送され、普通郵便でようやく届くという有様。
これに対して学生側が状況を報告したので、弁護士が謝罪のツイートをするよう求めると、これも放置。指導教員が電話で強く要求して、虚偽ツイートをしたことをツイートしたが、そのこと自体は先生側に報告もしない。
そして学生はその後、「専攻代表からのメールに返信せず,電話にも出ない状況となった。」

ここに来て大学の先生が本件訴えを提起したのだ。

訴訟の中でも、先生が無条件で単位をくれるという発言をしていないことを既に認めていたにも関わらず、その点を争うなどの不当な応訴行為が見られ、代理人弁護士二名をつけて進行協議期日を経て和解協議を行ったものの、当人の出席を予定していた期日には現れず、自分の代理人とも連絡がつかなくなって辞任され、以後、弁論終結まで出てこなくなったというのである。

これでは、請求認容判決も当然であり、不当応訴による損害賠償が求められなかっただけ助かったというべきである。

なお、判決文には、「近年,大学における成績評価の公正さが求められており,本件発言のような形で単位を与えることが許されないのは公知の事実であることなどを考慮すれば,本件投稿に掲載された本件スライドの内容につき真実であると受け取った者が多かったとは解されず,むしろ大学教授の学生に対する冗談であろうと受け取った者が多かったと解される。」という部分があるが、論理がおかしい感じがする。
私ならこう書く。

「近年,大学における成績評価の公正さが求められており,本件発言のような形で単位を与えることが許されないのは公知の事実であることなどを考慮すれば,本件投稿に掲載された本件スライドの内容につき真実であると受け取った者が少しでもいれば原告の名誉・信用に極めて大きな打撃が加えられるものと解される。」

他方で、次の部分は、バカ発見器たるツイッターの経験則には反する。

「被告は,大学生にもなっており,ツイッターで虚偽の事実を摘示する行為がこのような大きな事態を招くことを認識することができたといえる。」

ここは「認識すべきだった」と書くべきだ。

なお、本件からの教訓、もちろん虚偽ツイートは痛い目にあうとか、不法行為をしておきながら雲隠れしても問題は解決しない、誠意を持って対応しろと、学生の側には教訓があるが、先生の側にも。

パワーポイントのスライドは、得てして独り歩きする可能性がある。スライドに書かれていることを口頭で否定して見せても、本件のように写真を撮られれば声は入らないし、撮影を禁止してもする人はいる。スライド自身にも、真意が現れるような内容にしておくことが望ましい。
効果的であろうとすれば、難しい場合もあるが。

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