web法庫管理人のご逝去
法庫という法令データ提供サービスサイトの管理人がお亡くなりになったということである。享年58歳。
法情報学的には、法律情報のウェブ公開という出来事が一つのトピックである。
法令は、少なくとも日本の著作権法では権利の対象となっていないパブリックドメインであるし、のみならずそもそも主権者たる国民には可能な限りのアクセス機会が保障されるべき情報であるので、ウェブ技術が開発されてある程度普及した段階では、この法令情報へのアクセスをインターネット経由で、無料で、保障されるべきだという声が高まった。
実際には、法令データよりも裁判例のデータがアメリカのクリーブランド大学を中心とする実験プロジェクトで提供され始め、続いてコーネル大学のLeagal Information Institute (LII)が立ち上がり、その他多数のボランティアないし手作り商業ベースの個人サイトが立ち上がっていった。
日本でも、個人的ないしグループ的な試みが行われた。
欧州、特にフランス・ドイツでは、法情報に対する無料のアクセス権を主張する宣言が、ザールブリュッケン大学を舞台として出された。
そんなムーブメントの中で、法庫は、草分け的存在であり、かつ持続性のあるサイトとして貴重な存在であった。
もちろんその後、日本でも、行政管理庁、そして総務省の法令データ提供システムが開放され、裁判所サイトでは裁判例情報が公開され、各地の条例も例規データベースとして公開され、法情報に対する無料アクセスは一応保障されるに至ったが、そこに至るまでのボランティア的勝手法令データ提供システムが流れを作っていったことは間違いない。
そういう意味で、法情報アクセスを今日のように一応の水準にまで持っていった功労のあるお一人として、法庫管理人様のご逝去には心からお悔やみを申し上げたい。
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