韓国LS事情:実務家教員にも論文が必要
韓国人として初めて15年間、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)の裁判官を務めたキムアンドチャン法律事務所国際法研究所長である権五坤(クォン・オゴン)氏が、成均館(ソンギュングァン)大学法学専門大学院(ロースクール)から、教員任用を断られたという。今年2学期から招聘碩座敎授の資格で、国際刑事法講義を担当する予定だったが、成均館大学は、氏の論文点数が大韓弁護士協会所属ロースクール評価委員会の評価基準に達しないことを理由に、講義不可を通知したという。ロースクール教員の研究実績は、著書や論文、学術大会での論文発表、教育用事件記録作成及びリーガルクリニック指導業績の4つの項目で評価される。総点800点中少なくとも400点以上でなければならないが、このうち、論文評価の総点が480点と最も高い。権元裁判官は論文評価で低い点数が付けられたという。

LS教員の任用をめぐっては、日本でも2004年のLS開校時に色々とあったのだが、仮に上記の事例が日本であれば、三顧の礼をもってお迎えするだろうし、もし仮に基準みたいなものが引っかかれば、その基準の方の当否がクローズアップされ、速攻で修正されるのではないか。
実務家教員の任用でも、確かに、研究業績か、またはそれに匹敵する実務経験という曖昧な基準があったと思うが、「匹敵する実務経験」の評価はお迎えする側がする。もちろん外部評価もあって、開校の最初だけは文科省の下にあった設置審の審議にかかるが、その後は第三者評価に委ねられている。
ロースクールは実務教育強化を打ち出して発足したが、実際の主導権はかつて法学部から転職してきた理論教授らが握っている。結局、彼らは自分たちに有利な論文評価の点数を高く維持することで、有能な実務家の参入を事実上食い止めている。
ということなのだが、日本のLS教育では、個人的にはむしろ優秀な実務家の先生にご協力をお願いする方に大変であって、参入を食い止めるとかいう力関係にはないように思う。
しかしそんなことより、記事の最後を読んでビックリ。
最近、憲法裁判所で司法試験廃止は違憲ではないという決定が下され、国会で法改正をしない限り、司法試験は来年廃止される。そうなれば、韓国の法律家養成はひたすらロースクールが担うことになるだけに、国際裁判所裁判官出身も講義できないロースクールを画期的に改善しなければならないだろう。
韓国はこんなことになっていたのかぁ。
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