Lawyer:韓国では法曹一元が実現していた
昨日、Baek判事からお聞きした中で驚いたのが、韓国ではすでに法曹一元が実現し、裁判官は、検察官と弁護士で、3年以上の実務経験を有する者から選任する制度になっていた。
これはロースクール設立により、従来の司法試験・司法研修を経て法曹三者に分かれるという日本式から、ロースクールを出て弁護士試験を受けることを本則とし、例外的だった司法試験を来年から廃止することによるものである。
ということは多分まだ司法試験経由の判事採用は残っているのではないかと推測されるが、ともあれ、検察官と弁護士の間からの任官というのが主流となっているようだ。
このことは、実は、李妍淑・北大講師の翻訳にかかる「韓国のロースクール制度実施5年間の評価について」北大法学論集65巻6号1976頁、特に1973頁に以下のように記載されている。
ロースクール制度にお ける弁護士試験は、弁護士の資格試験である(実際に資格試験として運営されているか否かについては後述する)。判事と検事は弁護士の中から採用する。とくに、判事は2022年から10年以上の弁護士経験をもつ者から採用する。
これには以下の条文が注記されている。
法院組織法(2014年1月7日一部改正、公布番号第12188号)第42条第2項。附則(2011年7月18日一部改正、公布番号第10861号、2012年1月1日施行)第2条。
私自身は韓国語が読めないので直接原文に当たれないが、福島大学の金炳学先生が法院組織法を翻訳されていることをメールでご本人から教えていただいたので、そこから該当条文を引用する。
第42条(任用資格) 1 大法院長及び大法官は、二〇年以上、次の各号の職に在った四五歳以上の 者から任用される。 〔2011.7.18〕1号 判事、検事又は弁護士。
2号 弁護士の資格を有する者として国家機関、地方自治体、国、公営企業体若しくは政府投資機関その他法人において法律に関する事務に従事した者。
3号 弁護士の資格を有する者として公認された大学の法律学の准教授以上の職に在った者。
2 判事は、一〇年以上第1項各号の職に在った者から任用する。 〔改正 2011.7.18〕
3 略
これには附則に以下のような経過規定がつけられている。
第42条第2項の改正規定にもかかわらず、2013年1月1日から2017年12月31日まで判事を任用する場合には、3年以上第42条第1項各号の職に在った者の中から、2018年1月1日から2021年12月31日まで判事を任用する場合には5年以上第42条第1項各号の職に在った者が2022年1月1日から2025年12月31日まで判事を任用する場合には7年以上第42条第1項号の職に在った者の中から任用することができる。 〔全文改正 2014.1.7〕
ということで、10年以上の職務経験を有するものからの判事任官が完成するのは、2026年からということのようだ。
ともあれ日本の弁護士会が望んでやまなかった法曹一元は、韓国では実現されていた。
そして、法曹一元といえば英米のシステムを思い浮かべる。イングランドでは、弁護士会 Inns of courtが主体となって判事選任を行い、アメリカでは政党に所属する弁護士が州によっては選挙により、あるいは政治任用によって判事となる。
この点で韓国はどうなっているのかをBeak判事に聞くと、基本的には裁判所が任命するが、弁護士会が判事候補者を面接により出すことになっていたとのことであった。ところが、弁護士会の面接を受けない弁護士が判事に選任されたとのことで、弁護士会が激しく講義したものの、結局弁護士会が行う審査は必要条件ではなくなったというのである。
このあたり、司法官僚組織をとる大陸法に属する国が法曹一元という英米法流の制度を採用することの難しさが現れているようである。
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