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2016/10/21

consumer:緑のオーナー被害回復裁判確定

なんと国(林野庁)が消費者から出資を募り、元本割れの被害を負わせた、いわゆる緑のオーナー事件が、最高裁の(おそらく)上告不受理決定により、国の責任を認める原判決が確定した。
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緑のオーナー制度 国に約1億円賠償命じる判決確定

「緑のオーナー制度」は、一口おおむね50万円で出資を募って国有林を育て、木材を売却した収益を還元するもので、林野庁は全国のおよそ8万6000人から500億円を集めました。

ところが、木材の価格が下がって元本割れが相次ぎ、全国のオーナー200人余りが「元本割れのリスクについて十分な説明がなかった」として、国に5億円余りの賠償を求める訴えを起こしました。

1審の大阪地方裁判所と2審の大阪高等裁判所は、いずれも「平成5年6月以前に国が使っていたパンフレットは元本割れがないという誤解を生じさせるものだった」として国の説明義務違反を認め、2審は、国に対してオーナーの一部におよそ1億円を賠償するよう命じました。

これに対して、賠償が認められなかったオーナーなどが上告していましたが、最高裁判所第3小法廷の山崎敏充裁判長は、20日までに上告を退ける決定を出しました。
これによって、国におよそ1億円の賠償を命じた判決が確定しました。

記事に従えば、上告受理申立てをしたのは原告側のようなので、国の責任を認める部分は事実上原判決の段階で決まっていたということもできそうだが、それはともかく、国の説明義務違反を認めたことは極めて注目される。

それとともに、この種の事案は、10月に施行されたばかりの集団的消費者被害回復裁判手続(日本版クラスアクション)の格好の題材となるのではないかと思わせる。

参考文献

この集団的消費者被害回復裁判手続は、特定適格消費者団体が原告となって共通義務確認訴訟を提起し、これが認められると対象消費者となる被害者に通知を行い、また一般に公告をして手続への参加を募り、参加してきた消費者の損害賠償債権を一括して団体が届け出て、相手方事業者が認めれば、支払われるというものである。
相手方が認めなければ、裁判所が簡易な裁判で債務の有無を判断し、それにも異議があればもう一度裁判をすることになるが、第一段階で基本的な責任を認める判決が確定している以上、その点は蒸し返されない。個別の事情で債権が存在しないという場合しか争うことはできない。

この制度の数多くあるネックの一つは、対象事件が限られているということで、前回紹介した茶のしずく事件のような人身被害には使えないのだが、この緑のオーナー事件のように、金融商品を販売したが元本割れを起こし、説明義務違反を理由として賠償責任が認められるというケースにおいては、根拠法規である消費者裁判手続特例法3条にいう不法行為に基づく損害賠償請求権として対象となりうることとなる。

国に対する賠償責任だから国賠ではないか、消費者裁判手続特例法には民法上の責任に限るとされているがどうか、という点については、公権力的作用ではない民事契約に関しての損害賠償は国賠法が適用されず、民法で行くというのが、特に国立病院などでの医療過誤裁判でも認められているので、このケースはますます民法上の損害賠償と認めることができよう。

説明義務というのは消費者それぞれの個別の対応に依拠しているので、共通した義務違反を認めるのは難しいではないかという点は、記事の以下の部分が注目される。

農林水産省は、募集の段階で必要な説明は行われていたとして、出資者に対して損失の補填(ほてん)をしない方針を決めましたが、全国のオーナーが国に賠償を求める訴えを起こしていました。
1審の大阪地方裁判所と2審の大阪高等裁判所は、いずれも「平成5年6月以前に国が使っていたパンフレットは元本割れがないという誤解を生じさせるものだった」として国の説明義務違反を認め、2審は、国に対してオーナーの一部におよそ1億円を賠償するよう命じました。

説明義務違反の認定というのは、パンフレットの記載だけで可能であるのだとすれば、共通義務の認定も可能である。個別の消費者の事情により、パンフレット以上の説明をしていたということであれば、それは「個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合」として第二段階の簡易確定手続で審理すれば良いということになる。
ただし、ほとんど全ての消費者が、パンフレットだけでなく個別の説明を受けた上で契約をしていたのだとすると、ほとんど全ての消費者について個別事情の審理をしなければならなくなるので、「事案の性質、当該判決を前提とする簡易確定手続において予想される主張及び立証の内容その他の事情を考慮して、当該簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当して、却下されてしまうかもしれない。

提訴が可能かどうかは、このあたりの実情に作用される。郵便局などでパンフレットを見て、申込書に記入して窓口に出すと、機械的に処理されるとか、ウェブサイトを通じて募集されたところにウェブサイトのフォームで応募して契約が成立するとか、そのような契約形態であれば、共通義務確認訴訟が適法と認められそうである。

ということで、相変わらず使えるかどうかの困難ばかりが目立つ集団的消費者被害回復裁判手続ではあるが、パンフレットやサイトの説明が消費者を誤解に導くものであったことから「説明義務違反」による賠償責任が認められるケースであれば、特定適格消費者団体の出番ということになりそうである。

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