Book:例題解説DV保護命令/人身保護/子の引渡し
今年読んだ44冊目は例題解説 DV保護命令/人身保護/子の引渡し (法曹新書)。
著作者名義はも法曹会であるが、実質的な執筆者は東京地裁裁判官グループであろう。
初出は「法曹」771号(2015)から786号(2016)に連載された「ほうそう講座 保護命令手続・人身保護手続」である。
はしがきには、この分野の手続が「体系的、網羅的に解説された文献が少なく、幾つか存在する文献も古いものや入手困難なものが多いため、実務上不便を強いられてきた」とあり、「最近の実務状況を広く発信する」という目的で執筆されたとある。
その中には、打越先生と榊原先生の共著『改訂Q&A DV事件の実務』や、そしてなんと法はDV被害者を救えるか ―法分野協働と国際比較 (JLF叢書 Vol.21)
も引用されている。
裁判所実務の批判的検討を目的とする本なのに。
しかし、それは1か所だけで、全体のトーンは、はしがきにもあるように、現在の実務状況をかなり詳しく伝えるものである。
そして、やっぱりそうかと思ったのは、退去命令について、現在の実務では追い出し型、すなわち被害者が夫婦の住居に住んでいながら加害者を追い出すタイプは認められないとはっきり書かれている。理由は、同居できているからというわけである。
日本のDV防止法は、もっぱら被害者が生活の本拠を捨てることが前提となっているのだなあ、加害者ではなく被害者が従前の生活を諦めなければならないことを裁判所も結果的に要求してしまっているわけだなぁと、改めて感じ入った次第。
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