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2016/08/01

FRANCE関連で国際民訴の貴重な裁判例

知財高判平成28年6月22日判決全文PDF
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フランスの相続法と日本の訴訟担当とが絡みあった興味深い事例である。

今、自転車操業が倒れそうなので見ているゆとりがないが、判決要旨から、以下の部分が注目だ。

本判決は,当事者適格の有無は,訴訟手続において,誰に当事者としての訴訟追行権限を認め,法的紛争の解決を有効かつ適切に行わせるのが相当かという視点から判断されるべき事項であるから,手続法上の問題として,法廷地における訴訟法,すなわち,我が国の民訴法を準拠法とすべきであるとしつつも,我が国の民訴法が,他人の権利や法律関係を訴訟で主張することを無制限に認めているわけではない(民訴法54条参照)ことなどを踏まえ,訴訟担当の中でも,訴訟法自体が担当者の定めを規定している場合ではなく,担当者が実体法上の法律関係に基づいて,訴訟物の管理処分権等が認められる場合においては,法廷地法の視点から,当該者に管理処分権及び訴訟追行権限を認めてよいか否かという点を検討する上で,訴訟担当者と被担当者との関係を規律する当該実体法の内容を考慮すべきものであり,本件のように,訴訟担当者の訴訟追行権限が一定の実体法上の法律関係の存在を前提にしている場合には,当該法律関係の準拠実体法を参照することが求められるというべきであるとした。

そして,原告X1の訴訟追行権限が,フランス民法1873条の1に基づく権利不分割の合意を前提にした上で,管理者の選任について,フランス民法1873条の5第1項に規定する共同不分割権利者の合意が成立しなかったため,パリ大審裁判所の本件急速審理命令により,原告X1がピカソの相続人中の管理者として選任されたことに基づくものであることを前提に,我が国の民訴法の枠組みから,上記のような管理者に対して当事者適格を付与することができるか否かを検討し,

1民訴法30条の規定する選定当事者制度は,共同利益を有する多数の者の中から全員のために訴訟当事者となるべき1人を選任することを容認しており,共同相続人はこれら多数の者に該当すると解されること,

2各共有者は, 共有物について,保存行為は単独で行うことが可能であるが(民法252条),基本的には持分に応じた使用が許されており(民法249条),共有物に対する不法行為による損害賠償請求権もこれに該当すると解されること,

3各共有者による共有物についての不分割の合意が規定されていること(民法256条1項ただし書),

4債権についても当事者の合意による不可分が認められていること(民法428条),

5相続財産は相続人の共有とされていること(民法898条),

6相続財産の保存に必要な処分について,裁判所による相続財産管理人の選任ができること(民法918条)などの条文及び法解釈があり,これらの条文及び法解釈は,フランス民法に基づく権利不分割合意とその不分割財産の管理者に関する規定と同様の趣旨と解されるから,相続人間で不分割とすることを合意した財産のうち, 準物権的な知的財産権について,裁判所により管理者に選任された相続人が,単独で訴訟を提起することは,我が国の法規とも合致するところであり,原告X1の訴訟追行権限を許容すべき合理的な必要性は,我が国における訴訟法の観点からも是認することができるとした。

そして,外国裁判所の確定判決に関する効力という観点からも,本件急速審理命令は,争訟性のある事件に関する判決には該当しないから,被告に対する送達(2号)及び相互保証(4号)の要件は求められないし,仮に必要であるとしても,ピカソの相続人が全員手続に関与していることや,フランスにおける判例法理上,外国裁判の承認に関して必要とされる条件を踏まえ,問題ないとした。

被告は,著作権法117条を理由に原告X1の原告適格は認められないと主張していたが,同条は,著作権法112条で定められた著作権又は著作者人格権等の物権類似の効力を前提として,民法で認められた共有関係や不法行為に関する条文及び解釈を反映したものであり,各共有者間において,実体的な権利関係や権利行使に関し,著作権法117条の内容とは異なる合意を一切許さないような効力を有する強行規定と解することはできないから,著作権についての不分割共同財産についての合意は無効とはいえないとした。

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