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2016/07/20

arret:民訴教材・裁判の脱漏が問題となった事例

裁判の脱漏があった事例というのであれば、まさしく教材なのだが、なかったと判断された事例である。

Temis1

知財高判平成28年7月13日判決全文PDF

本件は,控訴人が有していた特許第2640694号の特許につき特許庁が平成13年7月4日付でした異議の決定(本件決定)が違法であり,これに関する東京地裁平成16年(ワ)第19959号損害賠償請求事件の平成16年12月10日判決(別件判決)にも違法があるとして,控訴人が,被控訴人に対し,損害賠償金30万円及び遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は,平成28年1月28日,本件訴えは,訴権の濫用に当たり,訴訟上の信義則に反し違法であるとして,口頭弁論を経ないでこれを却下する旨の判決(以下「本件一審判決」という。)を言い渡した。

これに対し,控訴人は,控訴期間経過後である同年2月16日,本件一審判決が口頭弁論を経ずにされたもので無効である,又は裁判の脱漏があるとして,「被控訴人は控訴人に対し,30万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」との追加判決を求めるとともに口頭弁論期日指定を申し立てた。

原審は,原判決により,本事件は,本件一審判決の確定により全て終了した旨宣言した。
控訴人は,原判決に対して控訴した。

そして、本判決は以下のように判示した。

当裁判所も,本件一審判決において裁判の脱漏がないことは明らかであり,本事件は同判決の確定により終了したものと判断する。その理由は,原判決の「事実及び理由」欄の2項に判示のとおりである。

よって,本事件について訴訟終了宣言をした原判決は相当であるから,口頭弁論を経ないで本件控訴を棄却することとし(最高裁第3小法廷昭和57年10月19日判決・裁判集民事137号391頁),主文のとおり判決する。

上記の経緯の中だけでも、民訴の授業で取り上げられる問題や、取り上げられないけど民事訴訟制度に関わる問題が散見される。

いわく、訴権の濫用、訴訟上の信義則に反して訴え提起が違法とされる事例
裁判の脱漏
追加判決
期日指定申立て
訴訟終了宣言

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コメント

訴訟終了宣言の問題ではなく民訴法140条の口頭弁論を経ない却下判決の方ですね。
昔の常識では信じられないでしょうが、最近の地裁では「訴状を被告に送達しない」「答弁書は当然ない」「口頭弁論は開かない」「裁判官は訴状だけで判決を書く」「原告にはいきなり敗訴判決が送達される」ということが結構行われています。民訴法140によるものですが、「訴えが不適法でその不備を補正することができないとき」という法律の要件をはるかに超えて、濫訴だの信義則違反だのの理由でも140を使っています。裁判官にとっていは楽な話なので、なし崩し的にどんどん広がり、しかも最高裁は全て是認しています。憲法上の裁判を受ける権利には大いに問題がある状況で、民訴法140条自体の違憲性も視野に入ることでしょう。
特に国が被告の場合は、判検交流の影響でしょうが、判事が答弁書を書くノリで却下判決を出してきます。行政訴訟なんか、処分性や原告適格を理由に、140条で却下しますからね。逆に口頭弁論を開いたら、答弁書で検事から「140条で却下すべきだ」と言われて、気の弱い人はプレッシャーを受けるぐらいです。
本件は、第一審の前に別訴で確定判決があり、第一審はそれを再度訴えるもののようですから、一事不再理で140条でも良いのでしょうが、一事不再理を理由とせず、濫訴や信義則違反を理由として140条を使うのは、どうかと思います。

投稿: こんにちは | 2016/07/22 01:28

補足させてください。
民訴法140条で口頭弁論を一回もせずに、訴状だけ見て却下判決を題した例で裁判所のサイトに載っているものに次のようなものがあります。
名古屋地H17(行ウ)46H17年9月30日判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=7459
東京地H18(行ウ)54号H18年2月28日判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=35593
東京地H19(行ウ)220号H19年6月29日判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=35716
これらは、一昔前ならトンデモ裁判と言われたでしょう。

東京高裁は数歩進めて次のように言っています。
東京高H20(行コ)118号H20年10月1日判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=37600
P18「訴訟要件は職権調査事項であり、その起訴事実は自由な証明によれば足り、口頭弁論を必要的としないものであり(民事訴訟法140条参照)、事実審の口頭弁論終結時を基準時とするものでもない」
ここまで来ると「却下判決は、口頭弁論を一回も開かず、訴状だけ見て出せば良い」という誤った常識が蔓延しそうです。裁判を受ける権利はどこへ行くのでしょうか。

いみじくも4月12日に
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2016/04/book-208d.html
「訴訟要件は訴訟の要件ではない」と町村先生はおっしゃっていましたが、いつのまにかそういう常識が通じない時代が、そこまで来ているようです。

投稿: こんにちは | 2016/07/22 23:36

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