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2016/05/16

law:憲法違反の烙印を押された条項を修正する時間がない国会

先般違憲判決が下された民法733条について、以下の様な報道がされている。

再婚禁止期間を見直す民法改正 今国会では成立困難

女性にだけ離婚後6か月間再婚を禁じた民法の規定は憲法違反だとする最高裁判所の判決を受け、政府は、再婚を禁止する期間を100日間に短縮する民法の改正案を国会に提出していて、自民・公明両党の幹事長らは、先に今の国会での成立を目指す方針を確認しています。

これについて、自民党の吉田参議院国会対策委員長は記者会見で、「重要な法案であり、最高裁判所の判断もあるので、できるだけ成立させたいが、法務委員会ではほかの法案の審議もあり、今の日程感の中では非常に厳しい」と述べ、現状では、来月1日までの今の国会で成立させるのは日程的に困難だという認識を示しました。

法学入門的な話題だが、最高裁がある法律条項について違憲であると判決した場合、その条項の効力はどうなるだろうか?

1. 直ちに無効となる。
2. 国会で改廃するまで有効で、ただし適用は停止される。
3. 国会で改廃するまで有効である。
Justicepolonaise


答えは「3. 国会で改廃するまで有効である。」

最高裁は違憲立法審査権を有するが、それはあくまで具体的な事件の裁判に際して法令を解釈・適用する限りでの話で、一般的抽象的に法令の合憲有効性・違憲無効性を判断することはできない。

このことは、最近の憲法改正議論の盛り上がりとともに憲法裁判所を創るべきだという提案もいくつもなされ、その理由として抽象的違憲審査制が必要だと言われるようになってきたから、一般にも知られるようになってきたと思う。

しかし、それでは違憲無効と判断された条項はどうなるかというと、公式ルートとしては、最高裁判所裁判事務処理規則14条に、以下のように定められている。

第十四条 第十二条の裁判(引用者注―法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないとの裁判)をしたときは、その要旨を官報に公告し、且つその裁判書の正本を内閣に送付する。その裁判が、法律が憲法に適合しないと判断したものであるときは、その裁判書の正本を国会にも送付する。

国会は、これに応じて違憲とされた法律条項を改廃することになる。

また、上記の答えは「2. 国会で改廃するまで有効で、ただし適用は停止される。」でもある。
法律上の根拠はないが、最高裁において憲法違反との判断が下された条項をなお有効として適用し、裁判で争われれば、違憲判決を前提とする限りその適用は違法とされて、場合によっては損害賠償義務が生じるかもしれない。従って、違憲とされた法律条項は、事実上、適用を停止されることになる。

このことは、刑罰法規とか、行政処分の根拠条項とか、国家権力において適用するかどうかをまず判断する性質の条項では比較的わかりやすい。
民事法規でも、登記や戸籍に関わる条項であれば、その実務において適用が停止される。それ以外でも、裁判となれば、違憲判決の射程が及ぶのかどうかという問題はあるが、やはり同様に当該法規が適用できないことを前提として裁判されることになる。

そういうわけで、上記の民法733条については、100日を超えて再婚を禁止する部分について違憲無効だと判決されたことに応じて、法務省が2015年12月16日より、前婚の解消から100日を経過している場合は婚姻届を受け付けるように通達を出し、そのように運用されているところである。これは違憲判決の法的効力の結果ではなく、事実上の取扱いであり、強いて言えば判決の「波及効」というわけである。
離婚後100日過ぎていれば婚姻届受理 判決受け、法務省が全国に通知

法務省によると、民法が改正されるまで時間がかかるため、離婚後100日を過ぎていれば、16日に提出された婚姻届から正当に受け付けるという。

さて、最初に戻って、今国会での審議が混んでいるので民法改正はできませんという国会の対応には、一方で困らないように行政がきちんとしているので問題ないということもできる。一般の方の感じ方は、むしろそういうものだろう。
しかし、法律が変わらなくても行政権がしっかりと対応するから大丈夫というのでは、国権の最高機関たる国会の権威は地に落ちたもの、役立たずであっても国は回ると言われているのに等しい。

仮に最高裁の言うとおりの改正にとどまるのではなく、この機会に再婚禁止期間自体の廃止も視野にいれて抜本的に法律を見直すということであれば、時間がかかっても仕方ないし、それこそ国会が出来ることであって評価に値するのだが、既に法務省が行政的に実施している措置を追認するだけの改正であれば、民進党が「法案の賛否にかかわらず、審議する時間は必要だ。しっかり責任ある議論をするには、到底時間的に難しい」と言っているのも単なるその場しのぎの言い訳にしか聞こえない。

結局、この国では官僚がしっかりしているから国会議員(立法者)が不出来でも大丈夫だという俗論が正しいことを如実に示してしまった出来事というわけである。

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