FRANCEもついに協議離婚を導入か?
Le Mondeが昨日付けで報じたところによれば、Urvoas司法大臣が21世紀の司法法案の修正案を提出し、そこで裁判官抜きの離婚を可能とする条項が提案されているということである。
Le ministre de la justice veut permettre de divorcer sans le juge
それによると、最も簡単で最もよく使われている相互の同意による別離séparation par consentement mutuelについて、裁判官の関与を不要とし、両当事者の弁護士による署名と公証人への寄託により成立させるというものである。
政府の説明によれば、複雑で時間と費用のかかる司法手続を省略することが目的というわけだが、言うまでもなく裁判の遅延対策が目的で、特に家事事件については家事事件裁判官の欠員が甚だしいため、離婚手続に入るのに面会予約をとるのに1年も待たされるという現状がある。これを緩和しようというものである。
相互の合意による離婚は、年間7万件くらいあるそうだ。
これに対して反対しているのは、弁護士である。
興味深いことに、弁護士ではなく裁判官こそが適切な判断をすることができるという理由で、当の弁護士が反対している。
もちろん修正案でも、例えば当事者に撤回権を認めるといった安全策は用意されている。また未成年の子供が意見を述べたければ、裁判外による離婚ではなく裁判官の関与が用意される。
以上の改革の方向性からも明らかにように、欧州における裁判外紛争解決への希求は、裁判所の予算不足や事件増大に対する特効薬的なイメージで進められていると言ってよい。
それはともかく、協議離婚と言っても、紙切れ一枚で、証人二人とはいえ法律家の関与なく離婚できる日本とは格段の違いが残されている。当然ながら子供の処遇にせよ財産面の保障にせよ、離婚後の当事者の生活を守ることが必要であって、簡便であれば良いというものではない。
それに撤回権を留保するところなども、事柄の性質上、形式的に合意があれば何でも許されるわけではなく、合意の価値については相当に慎重であるべき事例があると認められている点が、日本人にとって示唆深い。
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