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2016/05/05

台湾のDV保護命令手続に見る被害者保護の手厚さ

Mamabebeネパールでのアジア女性シェルターネットワークのワークショップは、台湾のThe Garden of Hopeの共催によるもので、スピーカーは台湾の方々、そして資料には台湾のDV防止法が英訳されて掲載されていた。

台湾のDV防止法については既に、北仲千里=井上匡子=清末愛砂=松村歌子=李妍淑『台湾・マレーシアにおける女性に対する暴力被害者支援の研究』(KFAW 調査研究報告書 Vol.2015-3(2016)PDF)において、概略と2015年新法とそれ以前の法律との新旧対照表が日本語に訳されているところだが、改正されていない条文の、特に保護命令に関する規定で、日本法と対比して興味深い部分が見られた。

以下、条数は台湾のDV防止法を示す。

まず、台湾DV保護法では、保護命令が通常保護命令と仮保護命令、緊急保護命令の三種類に分かれている(9条)。
日本にはただの保護命令しかない。

台湾の通常保護命令の期間は2年以下である。2年以下ということは、具体的事案により短期間の保護命令も出せるということである(15条)。
日本の保護命令は、6ヵ月、2ヵ月という期間が定められ、それ以上でないことはもちろんだが、それ以下の一部認容のようなことも認められないとの解釈がされている。奇妙な解釈だが、そのことが逆に、退去命令を出しにくいという実務傾向につながっている。2ヶ月も必要なのか、というわけである。

また台湾の通常保護命令は1回毎に2年以下の期間で延長することができる(15条)。
保護命令が必要に応じて延長できることは当たり前だと思うが、日本の保護命令の実務ではそうでないらしい。全くおかしなことである。

保護命令の申立権者は、台湾の場合、被害者本人の他、検察官、警察、市当局、地方政府も申立てができることになっている。また未成年者や精神的・肉体的に障害がある人が被害者の場合、三親等以内の親族にも申立権が認められている(10条)。
日本法には、このような申立権の拡張はない。

さらに台湾では保護命令の申請等に訴訟費用の免除が適用になるとされている(10条)。
日本でも保護命令申立て手数料は1000円と極めて安いのではあるが。

申立て方法は、原則として書面申立てだが、被害者が切迫した暴力にさらされている場合には、検察、警察、市当局または地方政府が、口頭で、あるいはFAXその他の電子的手段で、申し立てることが可能とされている(12条)。
特に電子的手段を用いた申立てが可能というところに興味が惹かれるが、いずれにせよ日本法には存在しない。

そして申立書には申立人・被害者の現住所を書く必要はなく、送達を受ける場所を書けば良い。裁判所は管轄原因の調査のために被害者の現住所を調査することができるが、その場合の秘密保護措置も規定されている(12条)。
日本法では、そんな規定はない。但し運用でカバーしているようではあるが、法として欠陥があると言わざるをえない。

台湾法では審尋について、被害者の状況によっては、出張尋問も可能であるし、テレビ会議システムを用いた審尋も可能とされている(13条)。
日本法では、被害者が裁判所に来て、書記官と面談し、裁判官の審尋を受けて、さらに相手方を呼び出してといった手続が必要である。重大な被害を受けた被害者は相手にしていないのが日本法ということである。

さらに重要なことは、被害者の申立て・審尋に、親族、ソーシャルワーカー、心理的セラピストが付き添い、場合により意見を述べることもできるというのが台湾法である(13条)。
日本では、裁量的に認めている裁判所もあると聞くが、一般的には全く認めないというのが通常であろう。

保護命令の発令は、いかなる言い訳があっても遅滞してはならないという規定も台湾法にある(13条)。
日本法にも一応迅速に、とあるが、相手方を呼び出して審尋してというプロセスを特に迅速に行おうとすることはない。確かに手続保障は重要であるが。

その他、保護命令の内容についても車の引き渡しを命じたり、住居の費用負担を命じたりと、様々な点で日本法にない規定を台湾法は持っているし、仮の保護命令は審理期間中の安全確保に、緊急保護命令は4時間以内という迅速さで発令されるなど、多彩に被害者保護を図っている。

日本法も、欧米のみならずアジアの進んだ立法に学ぶところは極めて大きい。

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