legislation:改め文方式を考える
河野・国家公安委員長が以下のような問題提起をしている。
「わが国の法令改正は、これまで伝統的に『甲を乙に改める』という『改め文』方式で行われてきましたが、この方式では改正後の条文の姿が一望できないため、私は、以前から『新旧対照表』方式の方が、国民にとってわかりやすいと考えておりました。これを法律・政令に用いるためには、各府省にわたる様々な事情も踏まえ統一的に制度化する必要がありますが、府省令等については所管大臣の判断で行うことが可能であり、私は国家公安委員会委員長を兼ねておりますので、今回、お手許のとおり、実際に新旧対照表を用いた国家公安委員会規則の改正を行ってみたところです。
『改め文』方式のほうがわかりやすいものもあるでしょうが、御覧のとおり、『新旧対照表』方式も考えられますので、各大臣の参考となりますよう、御紹介させていただきます。」
改め文方式とは、以下のような方式で改正法をさだめるものをいう。
第六条第一号中「視覚障害者等(認定就学者を除く。)」を「認定特別支援学校就学者」に改め、同条第三号中「のうち認定就学者の認定をしたもの」を「(同条第三項の通知に係る学齢児童及び学齢生徒を除く。)」に改め、同条第四号中「第十条」の下に「又は第十八条」を、「学齢生徒」の下に「(認定特別支援学校就学者を除く。)」を加え、同条第五号及び第六号中「認定就学者の認定をしたもの」を「、認定特別支援学校就学者の認定をした者以外の者」に改める。
これが法律として可決成立すると、これにより改正されるべき元の法文を持ち出し、これに上記の指示通りの改変を加えて、ようやく改正後の法律の条文が明らかになる。
これは、法律の意義を考える上で興味深い方式である。というのも、法律は、一般的に裁判規範か行為規範であり、言い換えると裁判官を名宛人として裁判の基準となるように定めるのか、あるいは法に基づいて行動する市民等を名宛人として、その行動の基準となるように定められると解するのが通常である。
これに対して改め文方式の改正法律は、その法文自体は裁判官も市民も名宛人ではなく、既存の法律を変更することが命じられているのである。
ところが、これが新旧対照表方式にすると、どうなるか?
改正前の規定を改正後の規定に改めるという法改正の趣旨は、柱書きに書かれているので、趣旨不明となることはなさそうだし、改正後の規定を改め文から自分で生成しなくてもよくなるので、そこでのミスもなくなる。
形式をとるか、実質面をとるか、そうした問題である。
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