consumer:消費者被害回復の指示命令
これはなにげに大ニュース。
高齢者らを狙う悪質商法が増える中、消費者庁は8日までに、訪問販売などで不当な勧誘をして業務停止命令を受けた業者に対し、消費者の被害を回復するよう国や自治体が指示できる制度を新設する方針を固めた。同庁が今国会への提出を目指す特定商取引法改正案に規定を盛り込む。不当な勧誘で代金を支払わされても、泣き寝入りしがちな消費者が代金を取り戻せるよう、行政が後押しするのが狙いだ。
現行法では訪問や電話勧誘、通信販売で虚偽の説明をした業者に、違反の是正を指示できるとの行政処分の規定がある。この規定を改正して「購入者らの利益の保護や回復のための措置」を明記する。
ここで検討されているような、行政庁の処分により被害者に財産的被害の回復をもたらせる制度は、消費者庁の下で開かれた消費者の財産被害に係る行政手法研究会で集中的に検討していた。
その中では、様々な手法が検討されていたものの、消費者庁が被害回復を命じることについては、消費者庁自身、極めて及び腰だったというのが率直な印象であった。
その検討結果は上記研究会の報告書pdf31頁以下に記載されている。
そこでは、消費者安全法上の債務履行の勧告・命令の活用可能性と、行政処分に付随して、是正措置を求める手法とが検討されていた。
検討の中で出ていた特商法上の指示として被害回復を命じることについても書かれている。
実例として、通信販売に以下のような指示を出したこともあったという。
消費者庁による通信販売事業者に対する指示処分(平成24年11月29日)において、「通信販売に係る本件商品に関するテレビ広告において、『商品到着日より 30 日以内であれば商品代金全額をお返し致します』と表示しているテレビ広告だけを見て申し込み、契約を締結した消費者に対しては、当該表示のとおりに、商品の返品に応じた上、商品代金の返還をすること」等を指示している
ネックとなったのは、消費者安全法が対象とする事案が極めて限定的であることに加えて、特商法の活用についても、日頃から消費者庁と関係のある優良な企業であればともかく、悪質な事業者に指示をしたとしても果たして履行されるかどうかは怪しいものだという点にあった。
そういうわけで、少しネガティブな結論に終わったというのが正直な印象だが、しかし手段がないよりはあったほうが良いというのも事実である。
課題は色々あって、やはり実効性を求めるのであれば、悪質な事業者の財産の保全ができないとならないし、また消費者団体による消費者裁判手続特例法の手続と行政命令との関係はどうなるのかなど、理論的にも実務的にも検討が必要である。
| 固定リンク
「消費者問題」カテゴリの記事
- Arret:共通義務確認訴訟では過失相殺が問題になる事案でも支配性に欠けるものではないとされた事例(2024.03.12)
- #ビューティースリー(#シースリー)の脱毛エステ代金をライフティのクレジットで支払った皆さん、埼玉消費者被害をなくす会が取り返す訴訟を提起してます。事前登録をしましょう。(2024.02.01)
- 詐欺まがい広告がでてきたら・・・(2023.11.23)
- Book:柳景子著『契約における「交渉力」格差の意義』(2023.06.21)
- 適格消費者団体とはなにか、Chat-GPTに聞いてみた。(2023.02.20)
コメント