colloque:表現の自由(2)
報告内容は、まず憲法の表現の自由の規定を紹介し、2つの主要な法的制限としてわいせつ関係と名誉毀損とを取り上げた。
わいせつに関しては、本来女性に対する暴力という角度で取り締まりを行うべきポルノはまるで野放しとなっていながら、警察が極めて形式的に性器の露出の有無を基準に取り締まるものだから、ろくでなし子さんの表現が逮捕されて裁判にかけられるという滑稽な状況に陥っていることを説明。
名誉毀損については、SLAPP訴訟がはびこって表現が萎縮するおそれを指摘した。
続いて、社会的な問題として、極めて国家主義的な安倍政権の下で、極右が元気なこと、かつての朝日新聞神戸支局襲撃事件を紹介し、今ではこうした直接攻撃はないとしても、日本各地でヘイト・スピーチを振りまいていること、在日韓国人に対する攻撃が特にひどいこと、しかし、これを取り締まる法律がなく、業務妨害や直接的な不法行為に該当しないかぎり取締りも差止めも難しいことを説明した。著名な政府に批判的なジャーナリストが相次いで降板している現状も一言だけ触れた。
その上で、ヘイト・スピーチ禁止の法律を作らないのかという議論はあるが、安倍政権の下で作るヘイト・スピーチ禁止法は、政府批判禁止法になるおそれがあり、ジレンマだとした。
あと、最後にインターネットの恩恵で表現の自由を享受できているけれども、バカッターのように無軌道な表現行為に苦慮することになるという例を上げた。
持ち時間20分なので、メディアのスポンサーと視聴率を通じた不自由さとか、政府関係者のメディアとの癒着疑惑とか、あるいはNHKを呼びつけて番組内容に口出しするとか、植村元記者のトラブルとか、ネット関係での炎上問題とか、触れられなかったことが一杯。
質疑は非常に活発で、いろいろ聞いてくるので頭がついていかないくらいだった。日本社会は同調圧力が強いと聞いているが本当か、とか、日本では原発事故の被害について正確な事実が報道できないと聞いているが本当か、とか質問してきて、答に窮した。
特に放射能汚染の影響力については、今もなお、よくわからないというのが正直なところである。
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