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2016/02/03

avocat:清原逮捕余録:アトム法律事務所が、取材はこちらへと告知する

あの有名な清原が逮捕されたというニュースに続いて、アトム法律事務所が以下のようなツイートを出した。

清原和博選手の覚せい剤(覚醒剤)取締法違反の逮捕に関するテレビ取材については、朝10時よりアトム法律事務所新宿支部、同大阪支部で対応可能です。

取材希望のマスコミの方は下記までお電話ください。24時間体制で受付対応しています。
→ atombengo.com

Avocat

ところが、このアトム法律事務所が清原の弁護人となって彼のために動いているわけではなく、全く無関係の弁護士が上記のような告知をしたということのようなのだ。

清原和博について24時間体制で取材を受けるというアトム法律事務所は、清原の弁護人ではありません

このトゥゲッターまとめには、あの新潟の高島先生やIT弁護士の高峯先生弁護士にしてはITに詳しい吉峯弁護士などがコメントしていて、受任している弁護士のやり方にしては不自然なのだそうだ。さすがはプロである。しかし、一般人の私から見れば、てっきり事件を受けている弁護士が取材をコントロールしようとしているのかと思った。

高島先生のツイートによれば、清原逮捕後、マスコミからの取材依頼が殺到したので、交通整理をしただけというのが当の弁護士事務所の言い分だそうだ。

しかし、この件を見て思い出したのは、世界初のスパムメールを出したのがアメリカの弁護士夫婦だったというインターネット創世記のお話である。
それと比べると、新規性の程度はだいぶ落ちるにしても、やはり弁護士倫理の各ルールを読み直したくなることは言うまでもない。特に今回の場合、なるほど「受任した」とは一言も書いていないのだし、それらしく見えるのは読む方の勝手だということなのかもしれないが、それは世に蔓延る数多くの紛らわしい広告と同じことである。

例えば弁護士の業務広告に関する規程(日弁連)には、以下のような条項がある。

(禁止される広告) 第三条 弁護士は、次の広告をすることができない。

一 事実に合致していない広告

二 誤導又は誤認のおそれのある広告
(中略)

七 弁護士の品位又は信用を損なうおそれのある広告

また弁護士職務基本規程にも、「虚偽又は誤導にわたる情報を提供してはならない」とある。

上記は広告ではないぞと言われるかもしれないが、広告ではない単なるドメイン名の登録であっても、著名企業と同じスペルで誤認混同のおそれがあれば、サイバースクワッティングとして断罪されるのだ。

あまりにもたくさん盛り込んで暗号になってしまった不正競争防止法2条1項14号から切り取ってみよう。
「役務、その広告または取引に用いる通信に、その役務の質または内容について誤認させるような表示をして役務を提供する行為」
この役務に「弁護士業務」を、通信に「ツイッター」とか「SNS」とかを当てはめて読んでみると、その精神はよく分かるであろう。

そもそも弁護士の場合は、一般条項としての基本規程の6条「名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高める」という前提もある。一般企業や一般人よりも厳し目な自己規律が要求されていることは言うまでもなく、一般社会でダメな誤認混同のおそれのある広告まがいに、広告ではないからOKというのは無理がある。

弁護士業界の競争が高まり、特に新たに参入する若手が厳しい立場に置かれていて、その中でむしろ競争に打ち勝つための努力が求められていることは承知しているが、しかし一方で弁護士が業務独占でなくなったわけではなく、専門職として顧客や一般人に対して情報の非対称性の中での優位な地位を有していることも変わりがなく、さらには弁護士会による高度な自治が法定されていることも変わりがない。

上記の一般条項も、道徳的なことはともかくとして、「信用を維持する」努力をしないと、結局弁護士自治に対する理解も得られなくなって、監督行政機関が必要だというような声が力を得るという悪夢が現実のものとなりかねない。

難しい話を抜きにしても、世間で注目を集める事件が起きるたびに、どこかの弁護士(事務所)が我れ先に「この件についての取材はこちらの電話にどうぞ」というツイートを発するようになったら、それは日ごろ日本人がバカにしているアンビュランス・チェイサーのオンライン版にほかならない。

追記:その後、アトム法律事務所のブログには、以下のような記述が表示された。
これなら、弁護人になったとの誤解の余地はない。

※注意※

弊所は清原和博氏の弁護人が所属する事務所ではありません。

取材は「覚せい剤の初犯でも刑務所に行くの?」「所持と使用が両方とも起訴されたら刑務所に行くの?」「覚せい剤で逮捕されたら釈放されるのはいつ頃?」「留置場の中ではどんな生活をしているの?」といった覚せい剤取締法違反事件に関する一般的な疑問にお応えするものになります。

ともあれ、法曹の地位や法情報学にまつわるエピソードとして、記録するに価値のある出来事であったことには変わりがない。

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