media:産経新聞の知的レベルの低さが現れた記事
産経新聞の次の記事は、同紙の知的レベルの低さをまざまざと表すものとして貴重だ。
結婚控えたカップルは…「好きな人と同じ姓になれることがうれしい」 世論調査でも夫婦別姓求める声は限定的
「どちらの姓になっても困ることはない。むしろ、好きな人と同じ姓になれることがうれしい」こうした声が結婚を控えたカップルにあることを取り上げていて、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断した最高裁判決が良かったという評価に結びつけているのだが、夫婦別姓を選択できる法制度ができても、「好きな人と同じ姓になれることがうれしい」というカップルには無縁の話だ。 産経新聞は、夫婦別姓を選択できる制度が、夫婦同姓を妨げるものではないということすら、理解できないようだ。
次に登場するカップルはもっと酷い。仮名でないとしたら、気の毒なレベルだ。
来春に挙式を予定しているという東京都立川市の会社経営、石川恵美さん(35)は既に入籍を済ませ、「当然のように夫の石川姓を名乗るようになった」と説明する。社内では旧姓の近田で呼ばれることの方が多く、「日常生活に不便は感じていない」という。「(民法は)男女どちらかの姓を選べ、としているのだから、女性蔑視だとは思わないし、法律上の不備もないと思う」
この方の場合は、自分の都合とか自分の意思とかで「法律上の不備」ということを云々しているが、民法が適用されるのは自分だけではない。他の人の立場とか境遇を思いやることができないのだろうか。
メディアが取り上げる発言というのは概してメディアが勝手に切り取ったところなのであり、この石川さんの個人の意図がそうかどうかは分からないが、少なくとも産経新聞は、「仕事をしている女性が改姓しても困らない人がいるし、その人にとって法律の不備はない」という個別事例から「民法の規定は女性蔑視ではないし、法律上の不備もない」という一般命題を導き出すという非論理性をさらけ出しているのである。
しかし、実際に別姓を選べるようになった場合、別姓を希望するかとの問いに、「希望する」と答えたのは13.9%だった。年齢別でも、これから結婚する層が多い20代でさえ21.1%にとどまった。
20%も別姓を希望する人がいるのに、その希望を押しつぶす法制度というのは、よほどの強い理由がなければならないと思うのだが、産経新聞的には 20%程度の希望者しかいないなら法改正の必要はないと考えるらしい。
例えば同性婚を世界中がこぞって制度化しているわけだが、その対象者は大きく見積もって10%程度。90%の人々には関係のない話であっても、結婚制度は男女のものという非常に基本的なところから見直す必要がある、それが共生社会の人権保障のあり方というものである。
産経新聞的には、この比較的少数者でも生きやすい世の中を作ろうと言う発想はないようである。
そして最後の幼稚園のこどもの名前を呼ぶのが混乱するかもしれないという例は、はっきり言って何が言いたいかよく分からない例である。夫婦別姓となったとしても、子供の姓が2つになるわけではないので、幼稚園に◯◯ちゃんとして登録された子供は◯◯ちゃんと呼べば良いだけの話である。何かよほどの混乱があると誤解した例なのではなかろうか?
ということで、上記記事は産経新聞が「惨軽」と呼ばれる知的レベルの低さをさらけ出している格好の例であった。
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コメント
曾野綾子氏のアパルトヘイト肯定論を堂々と載せる新聞ですから、その程度でしょうね。
投稿: p | 2015/12/22 01:49
いやそれ日本人のレベルやから
投稿: わいく | 2015/12/22 09:44
下から3段落目の、「例えば」で始まる段落において、「例えば同姓婚」は、「例えば別姓婚」の誤りではないでしょうか?
投稿: 蒸気抜きのベネット | 2015/12/22 09:58