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2015/11/25

民訴教材:公示送達が要件を欠いて無効だとされた事例

名古屋高判平成27年7月30日判決全文PDF

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有名な藤山雅行判事が部総括の判決だが、アンチのお医者さんや行政官のみなさんは色めき立つ必要はない。
むしろ、弁護士とその元依頼人とが当事者であり、かつ、弁護士会照会を行うなどの調査を尽くすべきだったかどうかといった問題点をはらんでいるので、弁護士さんに興味を持たれそうである。

またロースクール的には、公示送達が適法となるかどうかの考え方と、その要件を欠いた送達がなされて判決も下され、確定し、強制執行がされたというケースにおいて、被告はどのような救済を求めることができるかについての問題素材でもある。

送達が無効なら送達からやり直せ的な答案が多いが、それについても考えなおす縁となるだろう。

それに加えて、興味深いのは、弁護士会照会の要否をめぐるやり取りである。

まず、本件は弁護士が元依頼人から受け取った着手金・報酬金について返還を求められたので、その債務不存在確認請求の訴えを提起した事案であり、従って被告=債権者たる元依頼人からの返済要求が先に立っている。そのような状況で、被告の住所が不明であるということは、アプリオリにおかしい。
ヤミ金などが不当な返済要求をしてくるという場面では、自称債権者の身元が不明ということがありえても、元依頼人であり、FAXも電話も通じている相手である。
意地の悪い見方をするなら、「相手方が住民票の届出を怠っていたことを奇貨として」というようなセリフも思い浮かぶ。

次に、逆に、弁護士会照会を使えと言われたわけだが、弁護士さんが自分自身の紛争について弁護士会照会は使えるものであろうか? 弁護士が受任した事件について用いることができる手段であるから、自分自身の事件について弁護士会照会が用いられるとなると、それは職業上の必要性から認められた手段のいわば濫用ということになりそうだし、まして後に触れるように報告義務が紹介先に生じるという解釈を取る以上、そのような手段をなぜ弁護士だけが有するのかというのが疑問になる。

第三に、弁護士会照会は守秘義務で断られるから、それを使わなくてもとやかく言うなというのが当該弁護士の言い分だが、これに対して裁判所の応答は興味深い。

訴えの提起に当たって被告の住所が不明な場合に、これを調査するために弁護士法23条の2所定の照会や民事訴訟法186条の調査嘱託をする場合には、照会先又は嘱託先がこれに回答すべき義務は、秘密保持義務に優先すると解すべきであるから、これらの手段を経ることが無意味であるとは到底いえず、被控訴人の上記主張は理由がない。

ほうそうですか、という感じである。
今後、弁護士会照会や調査嘱託に対して不当に回答拒絶をしてきた場合には、これに対する損害賠償請求を、なんとかして管轄を見つけて名古屋高裁管内の地裁に提起することがオススメである。
フォーラムショッピングの嫌いはあるが、本判決裁判所の構成員が転勤したら、その転勤先の管内裁判所もオススメであろう。本判決を参考判決につけて、記憶を喚起してもらうのが良いとも思う。

やや皮肉な書き方になってしまったが、それだけ裁判所は一般的に義務違反に対する損害賠償を認めないのである。

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