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2015/11/24

France人と国旗・国歌

パリのテロ事件の後、フランス支援のシンボルのように三色旗があちこちに用いられ、フェイスブックのプロフィールにも加工できるような仕組みが提供されて、さらに流行ったが、フランス人の三色旗に対する愛着が普段からすごいのかというと、そんなことは決してない。

フランスの三色旗は、革命歌のラ・マルセイエーズと並んでもちろん共和国のシンボルとして認められているし、日本の日の丸・君が代みたいに軍国主義のシンボルとして嫌われたり、これに対抗して逆に崇められたり、といった歪んだ関係がない分だけ、素直に受け入れられている。

しかし、普段からナショナリストが幅を利かせているわけでは必ずしもない。シンボルとして受け入れられ、あちこちに掲げられてはいるが、普通の人が自分の家に飾ったりするアメリカのようなことはほとんどなかった。
大体、私がかつてお世話になった大学の民訴の先生は、三色旗がたくさん並んでいるところにたまたま出くわして、「ありゃ国旗フェチだろ」と吐き捨てるように言っていた。特に反体制というわけでもない普通の先生である。

それが、今回のテロ事件の反動で、国旗を飾りたい、三色旗を掲げたいという人や組織が急増したものだから、今、国旗屋は空前の活況で生産が追いつかないというのである。

Attentats de Paris : flambée des ventes de drapeaux français
Kokkiya

Selon un sondage, 93% des Français voient le drapeau français comme une valeur refuge. Un regain de patriotisme qui fait le bonheur d'une société spécialisée dans la fabrication d'étendards

他の先生の言うのには、フランス人がこんなに国旗を好きになったのは、戦後、パリが解放してドイツに勝利した時と、サッカーワールドカップで優勝した時に続いて戦後3度目だという。

同じことはラ・マルセイエーズについても言える。

同じ先生によれば、フランス人でも歌えない人はたくさんいる。大体、歌詞が古めかしくて長いし、日常生活を送っていたら歌う機会なんかない。だから、今回、あちこちで歌われているのを見て、みんな歌う振りをしているのかもねと笑っていた。

なにしろ、歌わないでいると、ネトウヨみたいな連中がフランスにもいて、その写真を撮って糾弾したりもするのだ。

Mjnonchant

なお、ネトウヨというと差別だという人がいるのだが、国際社会には受け入れられず、現代日本でも本来受け入れられない内容を、ネット上で、大抵は匿名に隠れて書き散らしたり、愛国ポルノで自分を慰めたりする人々のことを指す侮蔑的表現ではある。しかし、特定の階層の人とか民族を差別するものではない。

それはともかく、フランス社会がテロに見舞われて、ブッシュ政権下での9.11の後のような愛国者法は作っていないものの、非常事態宣言の3ヶ月延長を両院でスピード可決し、他方でISへの報復攻撃に走っているということ、国民一般の意識としても、三色旗とラ・マルセイエーズが非日常的なまでに広がっていること、そして非常事態宣言と報復攻撃に出た大統領が近年になく支持率を回復していることなど、今、フランス社会の歴史的な一大事を目の当たりにしているわけである。
実際テロリストに130人もの市民が殺害されたのであるから、無理のないことだとは思う。

しかし他方で、弱々しいながらも、非常事態宣言の延長に反対するデモがパリ市内で行われた。ただし、非常事態宣言により禁止されたデモということで、参加者のうちの58人の情報が検察官に報告され、訴追に向けて動いているとのことではある。
また、非常事態宣言の延長の可決に対しても、少なくない数の反対票は表明されている。

今後、テロの再燃で事態がさらに悪化する可能性はあるものの、またシェンゲン協定外と内との国境警備はさらに厳しくなることだろうが、9.11の後のようなことにまではなかなかならないのではないかという期待は持っている。

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