FRANCE人は国旗フェチではない
オランド大統領が呼びかけた、11月13日のテロ被害者追悼の日に国旗を掲げようというものが、実際にはどうなったかということだが、テレビニュースだけ見ていると、フランス国民がこぞって国旗掲揚に参加したかのように思える。
また実際、テレビでは国旗屋さんでは注文が殺到して生産が追いつかないというし、 25日、つまり追悼の日の直前にはネットで国旗が買えるサイトなどを紹介していたが、27日には間に合わないとも行っていた。
解決策として、国旗のあるサイトからダウンロードして印刷するなんてことも言われていた。
ということで、パリではないが、ポワチエ市でもわりと白人比率が多く、保守的な匂いもするので、さぞ街中がトリコロールに埋め尽くされているかと思って、ワクワクして外に出たのだが、こういう状況。
ということで、かろうじていくつか散見される、それも30くらい町中を歩き回って一生懸命さがして数本の国旗が目についた程度であった。
実際、どうやって買えばいいんだ―という声がテレビでも巷でも出ていたように、普段から国旗などには興味が無いのが一般のフランス人。
彼らがトリコロールをあげようと意識したのは、前世紀中も戦争勝利とサッカー世界選手権優勝の二度しかなく、今世紀では初めての機会という。
もちろん、各種の国際大会とか、国・自治体などの公的機関に関わる人達、さらには公務員の意識は大きく異る。しかし、日本のように負けた戦争での国威発揚の悪しきシンボルとなってしまった日の丸と異なり、フランス人にはトリコロールを嫌がる理由はない。
その彼らが国旗フェチではないのは、まあ要するに旗だろ、という極めて覚めた感覚が普通に行き渡っているのであろう。
そういう普段の感覚だからこそ、ナショナリズムが刺激されたりすれば、トリコロールが溢れたりもするのだが、トリコロールに抵抗がない一方でこだわりもなく準備もない。それが大統領呼びかけに上記のような結果をもたらしたというわけである。
誤解すべきでないのは、テロに対する怒り、テロ被害者に対する追悼の思いは、多くのフランス人が共有している。フランス政府はその怒りを象徴するかのような動きをしているし、国内でもテロの可能性に非常事態宣言の延長強化で応じ、人権も一時的とはいえ制限され、それに対する不満の声はほとんど聞かれない。
もちろん懸念の声はあるし、反対の声はあるが、不満とはレベルが異なる。
しかし他方で日常生活が押しつぶされてしまうような事にはなっていない。比較はできないが、東日本大震災後の自粛ムードとは大きく異る。
リヨンの光の祭典はいち早く中止となって驚いたが、犠牲者を悼むという趣旨の催しをやるそうだし、パリのシャンゼリゼ・イルミネーションは例年通り、ストラスブールのクリスマス市も警戒強化される中で昨日予定通り始まった。ポワチエのクリスマス市も淡々と準備が進んでいる。
そして今日明日は、パリで、COP21が開催され、ニュースの半分はエコ関連の特集に占められるようになっている。その残りの半分は相変わらずテロ関連、イスラム国関連だが。
日本でも、こうした覚めた感じで、素直に日の丸を扱えるようになりたいものである。
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