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2015/11/22

夫婦と姓のあり方を考えるenquete

Justicepolonaise

朝日新聞に文句をつけるのはなんだが、夫婦の姓、どう考える?と題するフォーラムのアンケート設問がわかりにくい。

その分かりにくさは、一面では設問の作り手の問題だが、一面では姓をどう考えるかの問題に起因していることなのだろう。

問1.結婚と姓のあり方を考えるとき、あなたが大切にしたいのはどのようなことですか。二つまで、選んでください

1  夫と妻それぞれの考え方を尊重すること

2  夫婦、家族としての一体感、絆

3  夫婦それぞれの仕事や社会生活上の必要性や便利さ

4  夫婦、家族は同じ姓としてきた社会の伝統や慣習

5  生まれたときからの姓に伴う愛着や自分らしさ

6  夫あるいは妻の家名を途絶えさせないこと

この質問は、それが主観的なもの、すなわち自分たちの家族や夫婦の中で大切にしたいものなのか、それとも制度として大切にしたいものなのかが判然としないので、その回答もいずれかとするかによって異なり得るし、答えが主観的なのか客観的なのかを区別しないで集計されてもなんだかなぁということになる。

例えば4などは客観的な制度としての面だし、5は逆に主観的な面だ。

それ以前に、夫婦別姓賛成派のおきまりの言い方になるが、「夫婦、家族は同じ姓としてきた社会の伝統や慣習」というときの伝統といっても、明治以降の話であって、そんなものは伝統と言えるのかという気もする。ここにはやや誤導が含まれている。

問2.あなたの姓について教えてください

既婚で、配偶者と同じ姓を名乗っている

既婚で、それぞれ別の姓を名乗っている

事実婚で、配偶者と異なる姓を名乗っている

単身

この設問は真意を推し計らないと理解できない。
既婚というのが法律婚を意味するであろうことは、他に事実婚という選択肢があって、それとの反対解釈で初めて分かる。
また、法律婚なのだとすると、それぞれ別の姓を名乗ることができないのが現行制度のはずで、この姓を名乗るというのが通称使用のことだと読み込んで初めて選択肢の意味が分かる仕掛けだ。

ま、それはともかくとして、法律婚でも別姓で居られる選択的夫婦別姓制度には全面的に賛成なので、年末の最高裁判決には期待をしている。
期待はしているのだが、現在の制度が婚姻の時に夫婦いずれかの姓を選択するという民法750条を前提に組み立てられているだけに、仮にそれが憲法24条等に反して無効だと判断するとしても、それだけでは済まない難しさがある。

尊属殺重罰規定の刑法旧200条の違憲判断は、単に当該条項を適用しないことにすればよく、それ以上の問題はなかったから、そう考えるかどうかだけで決められた。

しかし、現行の夫婦の姓の制度は、細かいことだが婚姻届の様式を変更しなければならず、仮に民法750条が違憲だと判断されたら、極端なことを言えば、その翌日からの婚姻届をどうするのかという問題に直面する。

また届出書の様式のみならず、戸籍のシステム改修も必要となる。

戸籍筆頭者は現在、姓を選ばれた方の配偶者に自動的に割り当てられるのだが、姓を選ばないで別姓で行く婚姻届を受理するならば、それとは別に戸籍筆頭者を選ぶ必要が有る。あるいはそもそも戸籍筆頭者の概念をやめてしまうか。

そして、子どもの姓をいつ、どうやって決めるのかということも、現行の戸籍制度で夫婦同姓が前提になっている制度を変えるとなると、どうすれば良いかを考えないとならない。
例えば子どもは一人一人選択できるようにするのか、子どもごとに違う姓にするのは認めないとすると、第一子の出生時に選択するのか、はたまた婚姻届で生まれるかもしれない子どもの姓も選択させておくのか。そして子どもが成人したら選べるようにするかどうかもまた一つの選択肢だ。

さて、今回の訴訟でもこの問題は考えられていて、分離された婚姻届不受理処分取消請求では、上告理由書の中で上記の問題にも触れ、夫婦の共通の姓の選択をしない婚姻届も受理すべきだという結論に達した場合に、裁判所が法創造をするのではなく、国会が立法を義務付けられるのだと主張している。

確かに、夫婦の共通の姓を選択しなければならないという規定が憲法その他に違反し無効であるかどうかは、その制度にぶる下がっている他の制度があるからといって左右される問題ではない。憲法上許されない規定は、その規定を前提にした他の制度を変えなければなりませんといっても、合憲になるわけではないのである。

しかしやはり、夫婦共通の姓を選択しない婚姻届の受理をすべきだと判断するのであれば、その翌日からの婚姻届に際して戸籍筆頭者をどうする、戸籍のシステム改修をどうする、そして子どもの姓をどうするという制度を決めなければならないことには、実務が回らない。

また特に子どもの姓の制度については、夫婦別姓賛成派の中でも意見が割れる問題であり、国会審議に委ねたとしてもそれだけでかなりの時間を要する話となるであろう。
 上記朝日のアンケートでもあるが、家名維持を理由として夫婦別姓制度を望む声があるのは周知のことである。その立場からすれば、子どもの姓は一人一人別々にできる制度にしないと意味がなくなるだろうし、他方で夫婦で姓がバラバラなんてという反発よりも、兄弟で姓がバラバラなんてという反発の方がより大きいであろうから。

ということで、今回の訴訟の国賠を認めるということは、立法の不作為を不法行為とするものであるから、国会が上記の立法政策を含めて立法作業をしなければならないという義務を認めることなので、必ずしも翌日からの婚姻届の扱いに窮するということにはならない。その意味で違憲判決が決定的に困難をきたすということではない。が、かなりハードルが高いことは否めない。

選挙の定数違憲訴訟と同じように「違憲状態」と理由中で書くことで立法を促すということになるのではなかろうかと、不安に思うところである。

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