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2015/11/10

blog:資生堂ショックに外野からなにかいう時の必読エントリ

女性の企業における働き方は、男性の働き方も含めて、また企業の経営方針とか接客ポリシーなどとも関連して、問題解決が困難な部分に突き当たる。
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資生堂が、育児等で時短制度を利用している美容部員の女性たちに、土日や夕方以降の勤務を引き受けるよう促したとして話題になっている。これには、特に子育て中の女性をターゲットにしているように感じられて、また特に資生堂がという驚きも手伝って、批判的なトーンの反応が強い。

しかし、その特に資生堂がというところだが、以下のブログが、資生堂に対してなにか言う前にこれだけは知っておけというのをまとめてくれているので、せめてそこは読んだ上で何か言おう。

資生堂ショック報道への反応のズレ

資生堂は離職率を公表しており、2013年度の国内資生堂グループ(管理・総合職)で3.2%だ。2014年度4.2%。

しかし、結婚・出産・育児理由は、0.03%にすぎない。2014年度は、ついに0.00%になった。

美容職で、離職率2013年度 3.1%(結婚出産育児理由0.80%), 2014年度 3.7%(結婚出産育児理由1.00%)。

1990年(25年前)には育児休業を3年に。

1991年(24年前)には時短勤務(育児時間)導入。

1993年(22年前)には介護休業、介護時短導入。

2003年(12年前)には社内保育所を設置。

2005年(10年前)には子供介護休暇導入。

2008年(7年前)には時短を小学校3年(満9歳)まで延長。

他にも、育児期間中の転勤への配慮、配偶者の転勤に伴う異動考慮、等など。

このエントリは、上記データを上げた上で、企業における女性の働き方と出産育児との衝突の関係を丁寧に描いていて、全くその通りだと思う。その上で、以下の一言。

結局土日や遅番は子供の居ない連中で回すんかいという不満が現場に蓄積される。

そのガス抜きで時短勤務者ももっと働けといったのだというのが、ブログ主の見解だ。

その他にも、時短勤務者もキャリア形成を図らなければならないという要請があり、これはこれで尊重されるべきだから、時短勤務や育休取得でキャリアアップの道を絶たれてはならない。すると子育てをしない他の勤務者からの不満がさらに高まるし、陰にも籠もって、職場が居づらくなるというわけだ。

加えて、これはブログ主の書いていることではないが、美容部員ということは大多数が女性であるからして、女性同士の問題として男性は我関せずを決め込める、あるいはもっと意地悪に、冷ややかに見ているというところがあるのだろう。

問題解決の方向は2つ。
一つは、出産育児に伴う負担、正確には出産と産後ケアを除く育児負担を家族、特に男性配偶者が主体的に引き受けること、そのためには男性の勤務形態を見直すことだ。
もう掛け声だけは陳腐化したといってもいいワーク・ライフ・バランスの見直しということだが、実際には全然であろう。男性のキャリア形成が、専業主婦をもって家事育児負担を全て免れた(=放棄した)ところでようやくスタートラインに立てるというのが現状だとすれば、そこを改善しない限り、育児負担のしわ寄せが女性にのみかかる事態を改善はできない。

ベタな話ではあるが、労働時間の全体的な短縮と、残業規制、そして特に男性の育児休業取得への優遇措置を進めていくしかない。企業自身ができなければ、法と規制当局の権限強化に向かうしかない。

なお、その代わりに社会が育児を引き受けるということで保育園の充実強化、待機児童の解消ということが施策として行われていて、これはこれで必要なことだが、これで全てではない。男性目線では、自らの働き方に類が及ぶのを防ぐために、あるいは企業としても企業戦士(最近では社畜と呼ばれる)の24時間働けますか的体制を壊したくないから、保育充実に目を向けがちだが、子供を24時間預ける訳にはいかないし、ある程度大きくなればどうしたって親子関係で子育てを引き受けざるを得ない。ティーンになれば、手のかかり方の質が異なるのである。

もう一つは、上記記事の資生堂ですら当然の前提としている時間外・土日のシフトの存在を解消していくことだ。
 そんなの日本社会で絶対無理と片付けられそうだし、今はたまたまフランスにいるので、フランス目線、ナンデウィークエンドニハタラクノデスカ的な発想になってしまうところがあるが、いかに顧客サービスを優先するとは言ってもデパートが24時間営業をしている所はない。バランスの問題ではある。
 そして、土日の勤務が労働者にとっては世間一般の休日に休めないという負担を強いるものであるので、法的に割増賃金を保障する根拠は十分にある。労基法は企業の定める休日に勤務する場合の割増賃金を定めるが、日曜祝日について一律に割増賃金を保障することも考えて良い。

いずれも、現在の労働規制緩和・労働強化の方向性とは衝突する話になってしまうが、畢竟、ワーク・ライフ・バランスを改善していくということはそういうことなんだと、規制緩和はワーク・ライフ・バランスの悪化に繋がると、そういう当たり前のことを改めて思うのである。

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