UN:女性の活躍促進に胸を張る首相がすべきこと
安倍首相は、お得意の女性の輝く社会推進を国連の場で自慢したようだ。
安倍総理大臣は、日本時間の28日未明、中国の習近平国家主席、ドイツのメルケル首相、それに国連のパン・ギムン(潘基文)事務総長らも出席してニューヨークの国連本部で開かれた女性の地位向上について話し合う会合に出席しました。
この中で、安倍総理大臣は「私は就任以来、『女性が輝く社会』を政策の大きな柱に据え、先月、女性活躍推進のための新たな法律を成立させた。これにより、男女がともに仕事や家事・育児を担うことが当たり前となる世の中を作り、世界に先駆けて少子高齢化社会の課題に対処しつつ、経済成長をも実現していく」と述べました。
そして、「日本は『21世紀こそ、女性に対する人権侵害のない世紀とするため、世界をリードしていく』という決意を実行に移していく。来年、日本はG7サミットの議長国として、女性のアジェンダを強力に推進していく」と述べ、国際社会と連携して、女性の権利の拡大や保護などで主導的な役割を果たしていく考えを強調しました。
正直なところ、言ったね、ここまで言ったらサミットまでにすべきことは待ったなしじゃないかという気持ちだ。
このブログで以前にUN:日本の人権保障の弱さというエントリで書いたことは、一年たってどれほど改善されただろうか?
男女平等に関しても、待婚期間や婚姻可能年齢に関する民法の女性差別規定を早急に削除すべしという。男女平等に関する第三次基本計画の採択は評価するものの、その効果は低いとして、政治における女性の果たす役割の少なさ、被差別部落も含むマイノリティ女性の政治過程への参加に関する情報の乏しさ、パート労働者の70%が女性で、同等の男性の給料に比べて58%しか給料をもらっていないこと、妊娠出産を理由とする女性へのセクハラや解雇に対しての刑事罰の不存在が懸念事項としてあげられている。
そして第三次基本計画の履行状況をしっかりモニターして、実効的な措置、例えばクオーター制を臨時的にも導入するとか、マイノリティ女性の政治参加を具体的に進める措置をとるとか、セクハラ、妊娠出産を理由とする差別に対する適切な刑罰を定めろとしている。ジェンダーに基づく家庭内暴力(DV)についても、レイプに対する訴追が少なく、親告罪であることの改善が見られないことや、DVに対する保護命令の発令が遅く、犯人の処罰例も少なく、同性カップルや移民女性の保護が不十分だと指摘されている。
具体的には、強姦の非親告罪化、同性カップルも含む全てのDVに対して捜査と犯人の訴追、有罪なら適切な刑罰を課すこと、そして被害者には緊急保護命令と、特に移民女性がビザを失うことを恐れて被害を訴えられない状況を防止することが必要だとしている。その他、いわゆるLGBTに対する差別も問題があるとして、包括的な差別禁止法の採択により差別構造の是正に力を尽くすべきだとしている。
そもそもジェンダーという言葉に対して敵愾心溢れる反応をしている時点で、全くひどい意識の政権なのだが、その中で安倍首相が上記の課題に手を付けることができ、前進させることができるか?
サミットまでにやるというのなら見守ろうではないか。
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