Franceテレビに現れた難民の逃避行
France2のEnvoyé spécial(@EnvoyeSpecial)は、NHKクローズアップ現代の週刊版のような雰囲気の番組だが、シリアからスウェーデンの親類を頼って逃げ出した難民の二家族を扱っていた回は、同行取材を行っており、迫力があった。
印象に残ったことは、難民としてヨーロッパを横断する家族は、元の職業が薬剤師だったりして、お金はある。それもかなりある。
一家族は、マケドニアまで逃れた後、飛行機を使ってシェンゲン協定地域に入ろうとする。国際線の飛行機であるから当然のことながらパスポートを要求される。しかし難民で逃げ出した家族にパスポートはない。
パスポートなしでも乗せてもらえるという触れ込みの業者を通じて飛行機のチケットを購入するが、チェックインの時に当然のことながらストップがかかる。業者に払った1000ユーロ近くの金は戻ってこない。
そんなことを三回繰り返して、これまたおどろくべきことに、三回目で、パスポートなしで搭乗できたのだ。
飛行機にのるだけでなく、パスポートコントロールも通過しているので、その辺りがどうなっているのか、分からない。仮に難民申請をするのだとしても、日本であればまず仮上陸の上で審査ということになるだろうが、そういう感じは受けなかった。
もう一家族は、もっと悲惨な逃避行で、鉄道に乗って国境を越えようとするも、マケドニアの国境管理官が途中で降ろしてしまった。事前に記者がパスポートはどうするんだと聞くと、難民のお父さんが「10ユーロくらいの賄賂でオッケーだ」と答えていたが、この時の国境管理は厳しく、100ユーロ挙げると申し出ても断固ノーであった。
結局国境の手前で降ろされた一家は、子どももおばあさんもいる中で、他の難民の集団と一緒に高速道路を歩いたりしている。
途中で何者かの車に乗せてもらったが、その車は高速道路のサービスステーションで休憩だと言って一家を下ろすと、一家の荷物を持ち逃げして走り去ってしまった。
高速の逃避行に戻り、それも夜にまぎれて、国境は警備が厳しいので山の中を歩いて越えて、途中で何度も疲労に倒れながら、なんとかハンガリーにたどり着いて、シェンゲン協定地域内で列車で移動できるようになったのだ。
あるときは赤外線カメラで、あるときは遠くから望遠カメラで、またあるときは密着インタビューを交えて、同行取材した方も、どうやったのかと思うが、こちらは移動手段もあるだろうしパスポートも当然あるわけで、はるかに容易だろう。
ただ、取材対象の難民が取材記者に協力した過程でどういうことがあったのか、という辺りが気にならないではない。
この放送の翌日には、ハンガリーの警察が国境で難民に警棒を振るっているシーンが放映され、また難民キャンプ状態の国境沿いのシーンがその後も流され、今はセルビアとハンガリーの国境を越えようと集結する難民が映しだされている。
欧州はなお難民流入問題に揺れている毎日である。
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