arret:土地を法的根拠なく占有して20年、占有した者の勝ち
時効制度というのは実に面白い。
東京高裁は、国が羽田空港として使っていた土地の一部で終戦前に私人が所有者であった部分について、以下のように認めて、国の所有権取得を認めた。
「国はGHQの要求で、法的根拠も契約もなく占有した。所有の意思がないと証明されたとは言えない」(東京高判平成27年9月18日)
取得時効には、自分のモノとして占有したことが必要なので、例えば賃貸借契約を結んで占有したということであれば、その土地は何百年たとうと借り主の所有にはならない。
それに対して、「法的根拠も契約もなく占有した」場合には、自分のモノにするつもり(所有の意思)がなかったとは言えないので、時効取得できる。
たとえ強制的なものであっても、貸借の形をとるよりは、無理やり奪った方が所有権取得という点では良いというわけである。
しかも、この所有の意思をもって、というのは、自分が所有者だと認識していたとか、他人の所有物ではないと勘違いしていたとかいうことは必要がない。それは善意とか無過失といった要件にかかるもので、所有の意思には関係がない。
他人のものと知りつつ、自分のモノにするつもりで占有したという場合に時効取得が成立するのだ。
通常想定されているのは、売買契約に基づいて占有を取得したが、その契約が実は無効であったにも関わらず、10年とか20年とか放置されていたという場合だが、GHQが使うために「法的根拠も契約もなく占有した」という場合も同じに扱われるのは納得がいかない。
なお、その場合には、「平穏」の要件が問題となる。「平穏」に占有を開始したことが必要だが、GHQの命令で国が「法的根拠も契約もなく占有した」場合に、平穏と評価できるか?
この「平穏」の要件も法律上推定されているが、平穏ではなかったとの証明があったと言えるのではなかろうか?
| 固定リンク
「裁判例」カテゴリの記事
- Jugement:不法行為加害者である未成年者の母親の監督責任を認めない一方、被害者の兄に民法711条による請求を認めた事例(2025.04.21)
- UK最高裁によるトランスジェンダーと平等権(2025.04.17)
- Jugement:新型コロナの軽症者収容のためホテル借り上げを具体的に依頼しながら契約しなかった地方自治体に契約締結上の過失責任が認められた事例(2025.02.17)
- jugement:福岡小学校教諭の公務災害死について市の安全配慮義務違反が認められなかった事例(2025.02.07)
- Jugement:原発事故に関する東電取締役等の任務懈怠により東電に与えた損害の賠償を命じた株主代表訴訟(2025.01.31)
コメント