lawyer:弁護士会の政治的主張の当否
日本弁護士連合会や弁護士会による特定の政治的な主張について「弁護士自治とは全く無縁な『目的外行為』であり違法だ」などとして、南出喜久治弁護士が1日、日弁連や所属する京都弁護士会、それぞれの会長などを相手取り、ホームページ上の意見書や会長談話の削除と100万円の慰謝料を求める訴訟を東京地裁に起こした。問題となったのは今年6月の「安全保障法制改定法案に反対する意見書」や平成26年7月の「集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」など計15本。
原告側は訴状で、弁護士法で弁護士は日弁連と弁護士会への強制加入が義務づけられているとした上で、「(声明として出される)文書は正規の機関決議を経たものではなく、文章を作成して発信する権限は日弁連や京都弁護士会にはない」と主張している。
提訴後に会見した南出弁護士は「日弁連は特定の意見を表明する政治団体になっている。主張したいならば強制加入の団体ではなく、賛同者を集めて任意団体を作ってやるべきだ」と訴えた。
産経新聞が嬉々として取り上げているのが微笑ましいが、その訴訟としての当否はともかく、こうした意見はネットではよく見かける。
しかし、弁護士法1条は「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」使命を掲げ、「社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力」すべしとある。
これをまともに受け取るならば、実質的な意味での社会正義を追求し、法律制度も社会正義に適合するよう「改善」する努力をする一環として、政治的な意味合いのある声明を発するのは、弁護士の集合体としても責務かもしれない。
社会正義による一定の政治的主張の正当化が可能かどうかは、大いに問題があるが、素で価値相対主義に凝り固まるのも、現実的ではない。
もっとも弁護士会の目的規定である同法31条や45条を見ると、個々の弁護士の責務を、その集合体としてもやるべしということにはなっていなさそうではある。
解釈の余地は大いにあるが、仮に社会正義の実現を弁護士会としても追求すべきという立場をとったとしても、会員間に意見の一致を見ない政治的主張を弁護士会がすべきかどうかは、少なくとも限界があると言わざるをえない。
ただし、その限界を超えたとしても、直ちに違法か、損害賠償請求権が個々の会員弁護士に生じるかは、また別の問題で、その点については筋悪訴訟だと思う。
| 固定リンク
「法曹・LS」カテゴリの記事
- Book:三淵嘉子と家庭裁判所 #虎に翼(2023.12.21)
- Mook:法律家のためのITマニュアル(2023.07.19)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
- 最近買った本:組織内弁護士の実務と研究(2021.09.13)
- Booklet:イマドキの裁判(2021.02.25)
コメント