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2015/07/14

event:インターネットは福音か、災いの源か

北大公開講座の一つに、表記のような題で出講する。7月16日と直前ではあるが、準備を兼ねて内容を簡単に紹介しておこう。

受講生用リーフレット(pdf)もご参照

世はまさに情報化社会、人々はスマートフォンを持ち歩き、しょっちゅうインターネットにアクセスしては、誰かとコミュニケーションをとったり、ニュースや百科事典を見たり、また写真や動画を公開したり、自分の今いる場所を記録したりしています。
 一昔前は、誰かとどこかで待ち合わせするといえば、場所と時間を正確に打ち合わせ、初対面なら目印に赤いバラとか黄色い帽子とかを身につけると言った工夫をしていました。しかし今はそんなことしません。札幌駅に何時に待ち合わせといったアバウトな決め方で、着いたらメッセージで今どこにいるかと伝えればいいですし、遅れるのも連絡できます。初対面でもあまり心配はいりません。いざとなれば、自分の今の写真を相手のスマホに送ってあげれば、赤いバラはもう必要ありません。
 情報を収集し、また自分から情報を発信できるのも凄いことですが、インターネットを通じて取引をすることが可能になって、生活も変わりました。日常的な買い物からオンラインオークションによる一般市民同士の取引も普通に行われ、しかもその範囲は国境を超えて行われます。日本にいながら世界中のコンサートの切符をとったり、海外旅行に出かける前に現地の鉄道の切符を購入したりできます。
 そして携帯電話やスマートフォンの動きとネットワークの利用は記録され、人々がどのように移動し、どのようにネット上で行動しているかをデータとして整理分析することも可能になりました。そうした膨大なデータをビッグデータをいいますが、ビッグデータの分析により、人々の行動と好みにきめ細かく応じた商品販売や宣伝が行われています。
 ところが、このようなネット社会は人々の暮らしを便利にするだけではなく、多くのトラブルや法的問題点を生み出してきました。
 第一に、秘密保護やプライバシー保護についてです。大手の教育産業会社が引き起こした大規模な個人情報漏えい事件は記憶に新しいところでしょう。この事件は、名簿屋に幅広く販売された個人のプライバシーが問題になっただけではなく、その情報を保有していた会社の営業秘密が盗み出されたという問題でもありました。現代社会は大量の情報を収集分析して経済的価値を生み出すことができる一方、情報を秘匿することや、自分の意に反する使われ方を拒むことに法的な利益を認めるようになりました。その矛盾した要請が共に高まり、大きな難問が生まれてきています。
 第二に、昔はプロのマスコミだけが可能だった不特定多数への情報発信を、ネットユーザーのだれでもが行えるようになると、発信した情報をめぐるトラブルに人々が巻き込まれやすくなります。情報発信を不用意に行うことで、自らの利益を残ったり、あるいは他人の利益を侵害したりすることが起こりえます。具体的には若者が将来を傷つけてしまうような非行を公開したり、破廉恥な写真を公開してしまったり、あるいは他人の名誉やプライバシーを侵害する情報を発信してしまったという場合です。表現の自由を幅広く享受できるようになったことは素晴らしいことですが、それによって法的利益が侵害される可能性もまた大きく広がりました。
 第三に、ネットを介した取引が普及すると、詐欺師の付けいるスキが大きくなります。サクラを使って利用料金だけをだまし取るサクラサイト、情報商材と呼ばれる内容空疎な情報を、さも貴重なもののように装って売りつける詐欺的商法、ネットを使ったねずみ講やギャンブルサイトなど、消費者被害の可能性は広がる一方です。
 第四に、ネットユーザーが犯罪被害者になるだけでなく、犯罪加害者になってしまう可能性も広がっています。著作権侵害や名誉棄損など、民事的な違法行為が同時に刑事罰も科されるというケース、業務妨害罪、そして児童ポルノなども拡大解釈されれば普通の人が警察に捕まるという可能性も否定できません。
 第五に、人々の脆弱性が重大な被害につながりかねない機会が広がっています。これは、例えば青少年、あるいは高齢者などに悪質商法業者が被害を与える可能性が挙げられます。しかし悪質な者に狙われる脆弱性は、子どもや年寄りに限ったものではありません。いわゆる標的型攻撃といわれるものは、企業や役所で働く人の弱点を巧みについた攻撃で、パソコンを乗っ取られたりすることにつながります。人々の脆弱性はネットワークの脆弱性にもつながります。昔の黒電話の時代には、停電になっても電話をかけることができました。しかし今は、停電にも、ネットのダウンにも無防備です。電子商取引ネットワークは、インターネットがダウンすると麻痺してしまいます。公共交通機関も同様です。脆弱な社会は、同時にサイバーテロにも弱い社会でもあります。

以上の諸課題について、法律が機能しているもの、解釈適用により対処しようとしている部分、立法により対処しようとしている部分を明らかにして、その法的問題点を検討します。

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