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2015/07/09

Conseil d'Etatの比較法シンポ

フランスのコンセイユ・デタが比較法に関する連続シンポジウムを今年実施している。昨晩はその第二回目であった。
Objectifs, méthodes et usages du droit comparé

René Davidを代表格とする比較法学の中心地という自負がフランス人にはあるのだが、ここへ来て比較法の重要性が語られるのはなぜか、その理由は比較的わかりやすい。

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パネリストは以下の面々。
Ronny Abraham, Président de la Cour internationale de justice
Mitchel Lasser, Professeur de droit à l’université Cornell d’Ithaca, New York
Sylvaine Poillot Peruzzetto, Professeur agrégé des universités, conseillère en service extraordinaire à la Cour de cassation

これに、コンセイユ・デタの争訟部長Bernard Stirn氏がモデレーターとなっていた。

テーマは、裁判官にとっての比較法の重要性ということで、特に上級審裁判官が裁判をする上での比較法的知識/手法がいかに重要かということを再認識させられるものであった。モデレーターの趣旨説明では、比較法の歴史を簡単に振り返った上で、現在裁判実務に比較法が欠かせないものとなっている点を、3つの段階にまとめていた。
 1. 一般的に、今日の比較法は、法がますます国内に閉じた存在でなくなっていく。それは環境法、インターネット法、そして刑事法も民事法も、国境を超えた存在となっている。
 2. この文脈で、各国法体制は互いに影響をし合っている。法が発展する中で、各国法のみならずEU法の発展も重要である。
 3. その結果、比較法はこの双方向的動きの中に寄与することが大きく、言い換えると異なる法/システムの比較が重要となってきている。


中心的な報告をになったのが国際司法裁判所Ronny Abraham所長の講演である。その内容は以下の通り。

各国最高裁判所の判断に比較法が重要であることはモデレーターの言及されたところだが、国際司法裁判所においては、なおのこと、比較法的な作業が重要となる。
1. 国際条約の解釈にあたっても、比較法は重要。
 当事国が、条約締結後にその文言解釈を巡って争う場合に、各国の法解釈・判例に関する知見が条約解釈にとって重要。国際条約上の義務の解釈にも、その締結時の判例や法状況が参考となりうる。条約の内容のみならず、その発展的な解釈にも重要。例えば、人権条約の解釈にも各国の法制が参考となる。最近の例では、国際司法裁判所ではないが、代理出産の扱いについての判断において、GPAに関する各国の法制と戸籍・身分証書作成に関する法制度の理解が欠かせなかった。

2. 国際慣習の発見にも重要
 国際慣習は今でも国際法上重要な法源であり、それは実務の中から発見される。実務家の意見、確信などを材料とする際に、立法、判例が前提として理解に不可欠である。国際司法裁判所の判決でも、国家の民事責任の免除ないし限界について裁かれたというケースで、イタリア法廷におけるドイツの司法免責の可否が問題となり、各国の司法免除の実務・立法等が比較法研究により明らかにされ、国際慣習として決め手となって免責が認められた。

3. 国際裁判管轄に関して
 この点は比較的最近問題となった。国際刑事法裁判所から国内裁判所に至るまでの国際裁判管轄について、基本的には判例により発展していくが、相互に積極的ないし消極的に衝突することがある。その調和が重要であり、各国裁判所が他国立法判例を参考にしていく。各国裁判所と特別国際法廷と国際司法裁判所の間でもこの管轄をめぐる争いと調整が存在する。

 以上3つの領域で比較法は裁判実務に直接影響する。

以上の他、ヨーロッパの文脈においては当然のことながらEU構成国の国内法に関する比較法がEU法の形成に取って欠かせない知識であることが認められ、EU法の解釈適用においても同様に各国の実質法解釈が重要な前提になる。

あと、質疑応答の中で興味深かったのは、裁判官にとってのエゴイスティックな関心で比較法が用いられるという。そのココロは、目の前に提出された法的紛争の解決に当たり、他の裁判所で、あるいは他の国でも同様の問題にどのような解決がなされているか、それにどのような理屈や考え方が提示されているか、これを学んで自分の問題解決に役立てようという、そういう動機でも比較法的知識は求められているという。具体的な例は上がっていなかったが、例えば忘れられる権利をめぐる判断なども、フランスの裁判所が判示した解決はスペインや、あるいは欧州人権裁判所でも、その基本的な考え方は応用され得る。前提となる法制度の違いはあれど、日本の裁判所においても欧州の解決方法において考慮されている要素を参考にすることはできる。そうした点で、日本でも比較法が裁判実務に影響を与えないわけではない。

立法論的な文脈においては言うに及ばずである。

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