arret:民訴教材・証書真否確認の訴えが却下された事例
原審において既に証書真否確認の訴えが不適法却下された件についての控訴審であるため、控訴審判決だけからは今一つ事案が分からないが、本件文書は、被告から原告への1000万円の融資について、これ自体は別に借用証書があるが、その融資の社内決裁のために作成された文書だということであり、借用証書と一体となって法律関係を証する文書になっていると主張されている。
また、別訴では、この本件文書が証拠としてソフトウェア著作権の移転の事実が認定されている。
以上のことから、本件文書は法律関係を証する文書になっているというわけである。
知財高裁は、こうした主張を以下のように判示して退けた。
民事訴訟法134条所定の「法律関係を証する書面」とは,書面自体の記載内容から直接に一定の現在の法律関係の存否が証明される書面をいうものと解されるのであるから,本件各文書がこれに当たるか否かの判断に当たっては,本件各文書の記載内容のみに基づいて判断されるべきであって,これとは別個の書面である本件借用証書を参照し,そこに記載された内容を補充して本件各書面の記載内容を特定することはできないというべきである。他方,仮に,本件各文書と本件借用証書とが,その体裁において一体となっていたり,本件各文書の記載自体において本件借用証書の記載を参照すべきこととされているような事情があるのであれば,両者を一体の書面とみて, 本件借用証書を参照して本件各文書の記載内容を特定することも許される余地があると考えられるが,本件において,そのような事情は認められない。控訴人が上記で主張するのは,要するに,本件各文書それ自体の体裁や記載内容とは別の事情から,本件各文書が本件借用証書と関連する文書として作成された事実が認められるということにすぎず,そのような事実が認められるからといって,本件各文書が「法律関係を証する書面」に当たるか否かを判断するに当たって,本件借用証書を参照することができるとすべき理由はない。
ちょっと後半の仮定の部分は難渋な感じがするが、本件各文書が借用証書と独立して法律関係を証する文書といいうる記載内容を持たない以上、本件各文書だけの真否を確認してみても、紛争解決にはつながらないという趣旨であれば、理解可能である。
なお、上記主張の後半、他の訴訟で証拠として現に使われたというだけでは、法律関係を証する文書と直ちに言えるものでもないというのも、うっかりするとハマりやすい点であろう。
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