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2015/06/30

FRANCE:証拠保全命令は将来の被告と証拠調べの対象者といずれに送達するのか?

フランス破毀院の判決二件がダローズのアクチュアリテ(最新時報)に紹介されていた。
Civ. 2e, 4 juin 2015, FS-P+B, n° 14-14.233
Civ. 2e, 4 juin 2015, FS-P+B, n° 14-16.647

日本では鑑定レフェレとして有名になった民訴法典145条の証拠保全musure d'instruction in futurumについて、これを申請に基づく命令で行う場合に、申請と命令を誰に送達すべきかという問題だ。

手続法らしい、小さな問題のように思えるが、誰の手続保障を重要と考えるか、本案の当事者なのか証拠保全の当事者なのかという問題であり、手続のあり方についての基本姿勢に関わるところがある。

法文は、申請に基づく命令を下す場合に、「申請書の写しと命令とは、それ(命令)が向けらている者に渡される」と規定している。

Copie de la requête et de l'ordonnance est laissée à la personne à laquelle elle est opposée.

そこで、上記裁判例の二件とも、証拠保全による証拠調べに直接関わらない被告が、自分に送達されていない申請に基づく命令は無効だと主張して訴えたのだが、破毀院はいずれも、申請に基づく命令で実施される証拠保全の負担を引き受ける者、例えば検証であればその検証場所の管理者なり検証物の所持者なりが送達の相手方となるべきだとして、被告らの申立てを退けた。

さて、この事件の注目点は、その送達の宛先というだけでなく、民訴法典145条の活用のされ方の実例という点にもある。同条は以下のような規定である。

S'il existe un motif légitime de conserver ou d'établir avant tout procès la preuve de faits dont pourrait dépendre la solution d'un litige, les mesures d'instruction légalement admissibles peuvent être ordonnées à la demande de tout intéressé, sur requête ou en référé.

あらゆる手続の前に、訴訟の結論を左右する可能性のある事実の証拠を保全または確立しておくべき正当な理由がある場合には、あらゆる当事者の申立てにより、法律上適切な証拠調べを申請に基づいて、またはレフェレにより、命じることができる。

フランスの仮処分に相当する制度がレフェレと呼ばれるもので、レフェレは相手方を審尋した上で発令するのが原則だが、申請に基づく命令はその審尋を省いて出される。証拠保全手続は、そのいずれも可能というのが明文で認められている。
また証拠保全手続は実際何をするのかは、日本法でも同様だが、条文には書かれておらず、証拠調べ手続が行われるという。そこで鑑定が命じられる例が非常に多いというのが日本で紹介されていた。
ところが上記の事件では、事案は不正競争行為に関わるもので、その証拠をつかむために、執行士に、相手方企業の保有する文書を調査して必要な証拠を収集するということを命じている。第二のケースでは、不正を行った従業員の通信内容の収集である。
日本で言えば、検証の枠組みでこれが行えないことはないし、カルテの証拠保全というのを思い浮かべれば、それと同様なのかもしれないが、日本ではその強制はできない。
新しく付け加わった提訴前の証拠収集処分であれば、日本民訴132条の4の1項4号「執行官に対し、物の形状、占有関係その他の現況について調査を命ずること。」というのが近いが、その文言から分かるように限定的である。
そもそも日本の執行官とフランスの執行士とでは、地位・権限がまるで違うので、執行官に積極的に証拠収集の権限を担わせるべきとはつながらない。

が、ともあれ、アメリカのディスカバリが極めて広範な証拠収集を可能にしているのに対して大陸法はそうでもないと言われるが、大陸法の中でもフランスは結構証拠収集手段が拡充されているのではなかろうかということが、上記の裁判例からもうかがわれるところである。

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