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2015/06/17

cinema:フランスの政教分離

La Séparation – 1905 Loi de séparation des Eglises et de l’Etatという映画を見に行った。
Laseparationfilmdefrancoishanss2005

場所はポワチエのLe Dietrichという映画館で、一日限りの上映であった。
非営利社団の自主的な上映だったらしく、映画館自体が一つの部屋しかない名画座だし、入場料を聞くと、いくらでもいいというお答え。これには我々だけでなく他のフランス人も面食らっていた。

しかも、上映後は30分位、マイクを使っての討論会が始まり、中々に興味深い展開であった。

内容は、La Séparation – un film sur la loi de 1905の中で全編まるごとアップされているので、それを見て欲しいが、要するにナポレオンがローマ・カトリックと結んだ、カトリックを国家の公共サービスとして認めた協約を破棄するかどうか、政教分離法案に関する1905年の国民議会での弁論を中心に構成したものである。

最初はカトリック司祭でもある議員による政教分離法案廃案を求める弁論と、これに対する提案議員の反対弁論。次は社会党左派の、より徹底的な教会の消滅を求める修正案提案弁論と、これに対する提案議員の反対弁論、そして提案議員グループに含まれていた社会党議員の賛成弁論、そしていくつかの社会党左派議員による修正提案の否決を経て、最後は提案された法案が修正の上で可決されたという経緯を描く。

第一次大戦の開始が近づく時期であり、ナポレオン法典からほぼ100年という時期でもある。第二帝政や7月王政などを経た19世紀から20世紀になったばかり。その時代では、ローマ・カトリックの権威と権益が巨大であり、そこから抜け出すことが、市民の宗教的自由・良心の自由を掲げる共和国にとって必須だとする立場と、キリスト教的伝統をむしろ必要だとする立場との衝突であった。

その結果、教会の特権をすべて廃止することまでは踏み込まないものの、国家と教会とを分離して、国家は教会に支援も反対もしないという法律が成立した。これがLaïcitéであり、その後、第五共和国憲法にも採択された。
La France est une République indivisible, laïque, démocratique et sociale.

社会党左派の修正案では、宗教的特権をすべて廃止せよと主張し、その中には宗教的休日の廃止や宗教的服装の禁止などが含まれていたが、いずれも否決されたのが興味深い。
宗教的な服装は宗教的な特権(神のご加護)を示すものだからというのだが、これも一蹴されていた。

しかし、映画でも後半に取り上げられていたように、Laïcitéの名の下に、スカーフに象徴される宗教的な表示を禁止するという形で、特にイスラム教徒の女性たちを公共の場から排斥する役割を果たしている。
そして現代社会でこの問題を取り上げるなら、イスラムにどういう態度をフランス共和国がとるのかという問題を無視できない。

映画が終わった後での討論会では、当然この点が観客から指摘された。いわく、Laïcitéは、宗教的自由の保障のための政教分離という本来の意味と、宗教的要素の排斥とがあり、後者が反イスラムに利用されているのが現状だという指摘である。
討論を主宰していた人は、そうした議論を喚起することもこの映画の目的だと述べたが、映画が示すように、前世紀初頭という時代背景で、妥協の上で、しかも政府は一切関与しない議員立法により成立した法律であることを強調していた。

残念なことに、スカーフ姿の人も、アフリカ出身とみられる人種の人もおらず、東洋系すら私達だけで、観客の層がほぼ白人インテリ層という雰囲気だったが、それなりに有意義な討論であった。

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