Franceの痴漢事情
昨晩のフランス2のニュースでは、フランスでも痴漢が問題化し、摘発が進んでいるということだった。
テレビに出てきたのはパリのメトロで、記者が隠しカメラで痴漢の現場を撮影し、その被写体は逮捕されて警察に連れて行かれるところまで写っていた。
最大5年の牢屋行き(emprisonnement)のリスクを犯したのだというナレーションとともに。
被害女性のインタビューでは、「しょっちゅうよ」という声がしきり。
この種の犯罪の専門家のインタビューでは、セクシャルな衝動よりも破壊衝動なんだという分析が述べられていた。
なお、痴漢という言葉はなく、ハラスメントのフランス語バージョンharcèlementとか、les violences sexistes dans les transportsなどというらしい。agressionという言葉も使われる。
この問題については、女性と男性の平等に関する高等評議会HCEfhが、100%の女性が交通機関で付きまとわれたり攻撃を受けたりする経験を持つとして、社会的な対策が必要だという報告書を4月16日に女性の権利大臣に提出していた。→pdfプレスリリース →PDF報告書本文
それによると、フランス社会で公共交通機関の痴漢(女性に対する性的嫌がらせから性的暴力まで)が問題となったのは、Sofie Peetersという人の作ったドキュメンタリーFemme de la rueが注目された2012年からのことであった。デイリーモーションにはそのドキュメンタリーを報じたニュース映像がアップされている。
そして2014年にStop harcèlement de rueという社団が組織され、この問題に対する対策を訴え始め、今年になって女性の権利大臣が諮問して上記の報告書提出となったものだ。
もっとも公共空間での性的嫌がらせは、19世紀から存在したし、1970年代の女性解放運動の中でそうした現象に言及されてはいた。しかし、ヨーロッパではいずれにしても2000年代に発掘された問題ということである。
この報告書が対象としている行為は、言葉によるからかいから強姦までと幅広いので、全ての女性が痴漢被害を受けたことがある、というわけでは必ずしもないが。
そして報告書は、特に電車内の痴漢行為について、やっている方には罪の意識が薄く、被害者も声を上げることが少なかったという。それ故、痴漢行為は犯罪だということの広報と法へのアクセスが必要だという。
以下のサイトは、道で嫌がらせを受けた女性たちの告発サイト。英仏両国語で作られている。道と言っても、電車の中も当然含まれている。
http://harcelementderue.tumblr.com
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