FRANCE情報セキュリティ法案が今晩採決へ
フランスでは、情報ネットワークに対するセキュリティを強化するための法案が大詰めを迎えている。
その名も情報(セキュリティ)法案 projet de loi sur le renseignementといい、国内治安法典とも訳すべきCode de la sécurité intérieurに、第8巻「情報について Du renseignement」を追加し、その他所要の改正をするものである。
その主な内容は、以下の通り。
1. 情報専門機関の手法を強化すること。
フランスの情報セキュリティと基本的利益を保護するため、情報の監視、収集、保全、その他の技術的な可能性を法的に拡大する。
具体的には、通信傍受、接続ログへのアクセス、テロ容疑のかかる人の追跡の効率化、海外活動への監視の強化、拘留中の通信監視など。
2. 公的自由とプライバシー尊重
自由とプライバシーの侵害にならないように、監視手段の行使はリスクと侵害との均衡をとるものとし、補充的なものとする。
その実施手続は、理由を付した書面を必要とし、首相とCommission nationale de contrôle des techniques de renseignement (CNCTR)が関与する。
この委員会は従来のCNCISの後継として新設され、司法官、電子通信専門家、そして議員を構成員とする。
また不服申立てはコンセイユ・デタに対してすることができる。コンセイユ・デタは逆にCNCTRの申立てにより特別の情報収集許可を出すこともある。
以上のような内容の法律案は、3月19日に政府から提案され、委員会修正を経て、国民議会の第一読会の最後に本日採択の予定である。
さて、こうした情報セキュリティを強化する法案は、逆に言うなら電子ネットワーク監視を強化するわけだから、反対の声も強く出され、多くの懸念が示されている。
例えば、Boris Manentiという人のLoi sur le renseignement : les 5 dangers du texteという記事では、以下の懸念が示されている。
1. 裁判官による令状主義から首相の許可により行政的にメールやSMSなどの監視=傍受ができることになること。
新設委員会であるCNCTRの意見を聞くことになっているが、緊急の場合はそれもいらないという。
2.データは長期間保存される。
通信内容は30日で消去されるが、音声データやビデオ、位置情報は90日、そしてアクセスログなどのメタデータは5年間保存される。
3.容疑者とたまたま一緒にいた人のデータも収集される恐れがある。
それも、意図的かどうかに関わらず、容疑者の情報仲介の役割を果たしていると疑う理由があればということである。
4.インターネットではあらゆるものが集められる。
テロ容疑者のネット利用は、IPアドレスやタイムスタンプはもちろん、フェイスブックで誰にメッセージを送ったか、グーグルで何を調べたかなど、広範囲のデータを収集される。
5.監視対象はテロリストに限られない。
大統領も首相もテロ対策法案であることを強調するが、法律案はそれだけを目的としたものではなく、外交や国家の安全のみならず、経済的、産業的、科学的なフランスの利益保護、組織犯罪の防止なども目的に含まれている。
2014年のデータでは、電話の行政的傍受が行われたうち60%が組織犯罪対策で、24% がテロ対策、 15% がスパイ防止、となっている。
国民議会の採決は、1時間15分後、すなわち5月5日の16時15分を予定している。
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