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2015/04/05

jugement:著作権に関する論文で著作者人格権を侵害した事例

著作権をテーマとする論文で、他人の論文の一部を無断で使ったことが氏名表示権侵害となるとされた事例である。

東京地判平成27年3月27日判決全文PDF

問題となったのは、判決文によれば、「通信と放送の融合に伴う著作権問題の研究」と題する論文であり、電気通信普及財団のサイトに掲載されている。この論文の元となったものは、電子通信情報学会の研究報告として公表され、その際に著作権を同学会に譲渡していた。
他方、被告側は大阪工業大学知的財産専門職大学院に所属する学生と、その指導教員、そして上記の学会であり、原告論文の一部からデッドコピーをしていた。

判決では色々と興味深い争点が繰り広げられている。

まず、創作性については、原告論文の記述部分が他者の調査結果の要約であったため争いとなったが、一応認められた。しかし著作権は学会に譲渡されていたので、原告自身には著作権侵害を主張する権利がない。
そこで、著作権譲渡を受けた学会には著作権侵害に対して適切に対処するべき義務があり、これを怠ったとして原告が譲渡契約の債務不履行解除を主張した。
しかしこれは、適切に対処するべき義務として原告の意向に沿う法的手段までとる義務は認められないとし、解除権も認められなかった。

結局、被告のデッドコピー部分の一部が原告の氏名を表示していないとして、氏名表示権侵害を認めたというわけである。

この他、著作権とは別に、剽窃行為をされない一般不法行為法上の利益侵害も主張しているが、これは一般論として認められないとするのか、当該事案でそのような利益侵害がなかったとするのか、あまりはっきりしない文言の下で、ともかく請求は退けられている。

世間では著作権を譲渡させることをもって雑誌掲載や研究発表をさせる学会とか雑誌等がある。そのように譲渡に応じてしまうと、自己の著作であっても剽窃行為に対しては極めて無防備になってしまうことを如実に示した裁判例ということができる。

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