jugement:民訴教材:証書真否確認の訴え却下例
事案は、代物弁済を約した書面の真否確認が求められたというものだが、弁済対象となる債務については別の借用証を引用するだけで、それを特定する書面ではなかった。
また、即時確定の利益としても、既に別訴で当該書面に関係する紛争が訴訟物として審理され、一部は確定判決にもなっている。これを独立して真否確認することのメリットは、蒸し返しという以外には見当たらないようにも思える。
裁判所は、以下のように判示して、訴えを却下した。
(1)・・・本件各文書は,そこに記載された「借用金額」,「期日」等の特定を欠いており,どのような場合に1~4の約束をするのかが明らかではないことからすれば,本件各文書について,直接に一定の現在の法律関係の存否が証明される書面であるとは認められない。したがって, 本件各文書は同条所定の「法律関係を証する書面」に当たらない。これに対し,原告は,本件各文書中の「借用金額」及び「期日」は,別紙2及び3の各文書に記載された作成日と同じ日付けの借用証書(乙3)を参照することにより特定されると主張するが,上記借用証書は本件各文書と一体性を有しない文書であり,本件各文書の記載から上記借用証書を参照すべきことは読み取れないから,原告の主張は採用できない。
(2) また,(1)に説示したところによれば,本件各文書の成否を確認することにより,原告の現在の法律上の権利又は法律上の地位に存する危険又は不安定が除去されるものではないから,確認の利益も認められない。
参考判例
最判昭和28年10月15日民集7巻10号1083頁
民訴二二五条にいわゆる「法律関係を証する書面」とは、その書面自体の内容から直接に一定の現在の法律関係の成立存否が証明され得る書面を指すものと解するを相当とする。なぜならば、証書真否確定の訴は、一定の現在の給付請求又は一定の現在の法律関係の存否の確認の訴の煩を避くるため、該訴における主要な書証の真否を確定することによつて事案の解決に資することを目的として認められた制度であるからである。
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