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2015/02/06

jugement:プロバイダの情報削除義務違反を認め賠償命令

名誉毀損でヤフーに情報開示命令 慰謝料30万円支払いも 神戸地裁

インターネットの「Yahoo!ブログ」で名誉を毀損されたとして、兵庫県芦屋市在住の男性が、損害賠償を請求するためブログ発信者の情報開示とブログの記事の削除などをプロバイダーのヤフー(東京都港区)に求めた訴訟の判決が5日、神戸地裁尼崎支部であった。大西忠重裁判長はヤフーに発信者情報の一部開示と記事の削除、記事の削除要請に応じなかったことに対する慰謝料30万円を支払うよう言い渡した。

 大西裁判長は「(男性が)情報開示を受ける正当な理由がある」としながらも、ヤフーが発信者の氏名や住所などの情報を持っている証拠はないとして、発信者のメールアドレスやインターネット上の住所である「IPアドレス」などの開示が限度とした。また、「名誉が違法に侵害されていることは明白」と指摘、記事の削除を認めた。

発信者情報開示請求と削除請求、削除義務違反による賠償請求というのが、氏名不詳人により名誉を侵害された被害者のホスティング・プロバイダに対して請求できる3点セットみたいな感じだが、そのいずれもが認容された事例である。

判決文によると、男性は資産運用セミナーを開催。しかし、平成20年10月、氏名不詳のブログ開設者が、男性の実名をあげ、男性が悪徳商法を行う詐欺師であるなどと記載したネット上の掲示板の投稿履歴をブログに貼り付けた。男性は25年10月にヤフーに記事の発信者情報の開示と投稿記事の削除を求めたが、ヤフーが応じなかった。

ちなみに、プロバイダ責任制限法は、発信者情報開示請求権を定める第四条のみならず、その略称が主として示しているプロバイダの不法行為責任を制限する規定が第三条にあり、本来はこちらが主であった。そしてプロバイダが削除義務違反となる場合は、3条1項に制限規定がある。

特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。

一  当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。

二  当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

上記の記事によれば、少なくとも3条1項2号の適用、ヤフーが自らの取り扱うブログによる記事の発信で原告男性の名誉が侵害されていることを、少なくとも知ることが出来たと認めるに足りる相当の理由があったという認定がされたのであろう。

なお、この規定は、責任を制限するものであって、責任の根拠規定ではない。根拠規定はあくまで民法709条によるのであり、そこでも故意または過失により被害者の権利や利益が侵害されていることが要件となっている。プロバイダ責任制限法はあくまで、故意または過失の認められる場合を限定したものと位置づけられる。

そして、削除請求は、民法709条を根拠とするか、あるいは被害者の人格権侵害を根拠とするか、いずれにせよ、民法の原則に基づいて認められるものである。

従って、「プロバイダ責任制限法に基づき発信者開示が命じられた」というのは正しいが、「プロバイダ責任制限法に基づき削除が命じられた・削除義務違反の賠償が認められた」というのは不正確というべきであろう。この記事はそう書かれているわけではないが、よく見かける表現なので一言。

なお、プロバイダ責任制限法については以下の二冊が参考になる。

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