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2015/02/17

avocat:人口に対する弁護士数(追記あり)

昨日弁護士会館に行ったついでに、裁判所データブック2014を買ってきた。

オンラインで多くの統計には接することができるとはいえ、紙には紙の良さがある。しかしそうはいっても、平成26年4月1日現在の数字ということであれば、一年前の情景であるから、年に2000人増える法曹の姿として実像と言えるかどうかは疑問がある。

そういう留保をつけつつも、色々と興味深い。

例えば、日弁連調べとして、各都道府県の弁護士会ごとの所属弁護士数と人口との関係を示した表が30頁に載っているが、これによれば、1000人以上の弁護士がいる弁護士会が7会ある一方で、二桁の会員数の弁護士会が12会ある。
基本的には同じ機能を単位弁護士会として果たすべき存在であるから、基礎コストは原理的には変わらない(もちろん会員数や資産、活動の幅により上下はするが)。従って、会員数に反比例して所属弁護士の負担コストが変動する。要するに田舎ほど弁護士会費の負担が重くなるという構造である。

人口と弁護士数との対比では、弁護士一人あたりの人口が各都道府県ごとに示されていて興味深い。

東京は別格で、弁護士一人あたりの人口は817人。さすがに石を投げれば弁護士に当たるとは言わないものの、よく引き合いに出されるフランスの弁護士数との関係では、既に凌駕している。フランスの場合、弁護士一人あたりの人口が1128人なのだ。
ドイツだって、弁護士一人あたりの人口は495人で、東京もそれに近づきつつあるといえる。

東京以外では、東京の一弁、二弁に肉薄している大阪弁護士会が、弁護士一人あたりの人口2140人で、東京とはレベルの差が否定出来ない。

一方、弁護士一人あたりの人口が多い方は、東北の宮城県以外の5県が軒並み1万人超えで、特に岩手と秋田は13000人台で抜きん出ている。
意外にと言っては失礼かもしれないが、四国はいずれの県も1万人に達していない。東北以外で1万人を超えているのは茨城、栃木、滋賀、三重、岐阜、富山、島根である。北海道は入っていない。

しかし北海道に関しては、からくりがある。北海道は札幌のほかに、函館、釧路、旭川と弁護士会があり、当然ながら札幌への集中が進んでいる。弁護士数では函館が48人と、全国でダントツの少なさであり、旭川と釧路も鳥取島根と同レベルの少なさだ。
そして北海道全体での弁護士一人あたりの人口は6123人と、千葉と同レベルを記録しているのだが、札幌の人口191万人と弁護士700人を除いて計算してみると、なんと18652人。抜きん出ていると評した岩手秋田をさらにぶっちぎって弁護士一人あたりの人口数が多い=弁護士は少ない、ということができる。

追記:その後、ご指摘により、若干古いデータではあるが、札幌地裁管内の人口を計算してみたところ、約300万人であった。これに基づき、札幌地裁管内以外の北海道の人口を243万1千人として、弁護士数187人で割ると、弁護士一人当たりの人口は13000人となった。確かにぶっちぎりではなく、岩手秋田よりは少し弁護士が多いと評価できそうである。

以上はいずれも冒頭に書いたように2014年4月1日現在なので、2014年暮れから2015年前半の弁護士入会を計算に入れれば、相当の変動があると思われるが、地方の傾向は基本的に変わらないであろう。

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コメント

町村先生、比較のためには、弁護士が何をしているかも重要です。ご存じのように、フランスはすべて弁護士強制の裁判離婚なので、いわば国選離婚弁護人がつきます。それで食べている若い弁護士もいると聞きました。法科大学院設置時に、そんなフランスの弁護士数を目指したと聞いて、耳を疑ったものでした。

投稿: 水野紀子 | 2015/02/26 10:00

水野先生、仰るとおりです。
その国選離婚弁護士も、見方によっては法律扶助の充実が目指しているところなのかもしれません。

まあ、一概に良し悪しは言えませんが。

投稿: 町村 | 2015/02/26 10:18

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