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2015/01/22

jugement:弁護士への嫌がらせに差止めが認められた事例

東京地判平成26年7月7日判時2239号82頁

ちょっと報道されていたような記憶があったが、見当たらない。
東京弁護士会が渋谷パブリックとして国学院大学法科大学院内に設置した公設法律事務所を舞台にした名誉毀損・誹謗中傷をする行為について、弁護士法人として差止めを求めるとともに、一回の違反につき50万円の支払いと、慰謝料500万円の支払いを求めた事件である。

この被告は、別の宿泊施設の料金設定に苦情を申し立てて、聞き入れられないと、自分の車のフロントガラスに相手の批判文言を記載した紙を貼って、周辺部分に長時間駐車して抗議していた。
それに対して被害者が依頼した弁護士が仮処分・差押え決定を得ると、被告の矛先は担当弁護士と事務所に向かったというわけである。

差止めが認められたのはあまり不思議はないし、慰謝料も弁護士に150万円、事務所に100万円の賠償が命じられたのも不思議はないが、違反行為一回について50万円という請求は却下されている。

その理由は、違反行為に対する金員の請求が間接強制を求めるものだとすれば民事訴訟で求める適格がないとし、将来の違反行為に対する賠償の請求、すなわち将来の給付請求だとすれば、「その場合の損害額をあらかじめ明確に予測することはできない」との理由で、民訴法135条の要件を欠くという。

通常、継続的な不法行為について過去の損害賠償が認められるのであれば、将来も同じ状態が続くと仮定して同じ割合の損害賠償を求めるということが、不動産の不法占拠については認められる。
しかし同様のことは、空港騒音については認められない。

車に批判的張り紙をしてつきまとうという行為がいずれに近いかというと、やはり後者ということなのだろう。

なお、間接強制が本案の訴訟物として請求できないのは、あまりに当然なので、これはひょっとしたら教材づくりの主張だったのかと勘ぐりたくなる。

参考までに、裁判所が批判的な文言を誹謗中傷であるとして違法だとした例を、この判決から抜き出してみよう。(WLJより引用)

ア (財)b協会代理人X2弁護士違反でないのを百も承知で違反と申請したのに対し盲判を押した東京地裁A裁判官

イ 天につばしたX2大先生X1法律事務所(財)b協会代理人どうする次の一手

ウ ババ抜きでババ(裁判所をだましてせしめた320万円)を持ち続ければゲームは負け

エ 違反行為b協会入居ビル玄関から半径200メートル以内での原告及び従業員の名誉信用の毀損誹謗中傷警察批判がなぜ違反行為

オ 4月17日(水)X2弁護士に対するぶじょく罪容疑でb協会担当B刑事に取調べを受ました有罪に自信があるなら逮捕して起訴できなければ赤恥X2弁護士上野警察署に正義はあるか

カ a大学X1法律事務所に場所を提供しているのは賃料を稼ぐためじゃあないでしょうこんな弁護士が教育に携わって大丈夫ですか

キ a大学またはX1法律事務所迷惑なら警察の生活安全課に一緒に行って話をしませんかその都度警察に連絡して警察官が来ても子供の使いで解決にはなりません

このうち、アからウまでは、それぞれ名誉および信用を既存したものと認められている。
またそれ以外のものは、それ自体として直ちに原告らの社会的信用を低下させるものとは言えないが、アからウまでと一緒に、あるいは個別にこれらを掲示したという全体を見て、やはり名誉・信用毀損と認められている。

この他郵便やFAXでも、上記アとイの書面を送りつけるととともに、「馬鹿が何人寄っても同じかX1法律事務所のお手並拝見裁判所前で恥をかくか」,「合法的サギ師」,「どうする大先生依頼は増加したかお手並拝見カウンターには要注意」と記載した書面を送りつけている。
これも、名誉毀損と認められており、違法とされている。

ネット上ではこれくらいと思われている限度内にあるかもしれない表現だが、状況によっては100万円、150万円の賠償をくらう文言ということで参考になるであろう。

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