fraud:裁判例に現れた出会えない系サイト
いわゆる出会い系サイトのうち、出会えないもの、サクラによるメール送信でメール送受信料やその他の費用にポイントをぼったくられるだけというものが数多くあり、裁判例でも、その利用料金の取り戻しを求めたものがいくつか見られる。
大体の場合は利用料金を不法行為による損害として賠償させるという構成で、詐欺取消による不当利得返還という構成は見当たらない。
私の確認した最初の事例は、さいたま地裁越谷支部の平成23年8月8日判決で、消費者法ニュース89号231頁に掲載されている。
これは、600万円ほどの利用料の賠償が認められ、実際にも戻ってきたそうだ。
その他は、2013年に下された一連の判決で、各種のデータベースに掲載されている。
その手口は、まずスパムメールをばらまいて、異性との出会いを餌にしたり、メールの相手をすることで報酬が得られるといったバイトのような呼びかけをするというもの、さらには占いサイトなどから誘導して勝手に登録してしまうものなどがある。
この導入部分を見ても、利用者がエロかったとか強欲だったという場合だけではなく、正当なアルバイトと思ったり、さらにはその気もないのに巻き込まれたという場合があることが分かる。
さらに、ポイントを購入させるテクニックは、典型的な出会えない系サイトにあるように、実際に会う約束をしてはつごうが悪くなったと言ってドタキャンするといった手口がある。ドタキャンなので、その場で連絡したり、確認したりと、何度も何度もメールの送受信をする羽目になる。
また、直接連絡を取るためには、通常のメールアドレスを交換する必要があるが、青少年保護のためにメアドを交換することはできない仕組みになっていて、成年者はそのメアド交換を可能にする特別のプログラムを購入できるといったケースもある。この特別のプログラム、文字化け解除プログラムなどと呼ばれるが、これを購入するのにポイントを何十万と購入しなければならず、購入してインストールしても文字化けは解消されない。問い合わせをするが、もう一度やってみろと言われて、何度も何十万とポイントを購入することになる。そのポイント購入費は、出会いの相手が後で返却するから、立て替えておいてと言われることが多い。
しかし、その約束は果たされないのである。
ポイント購入手段はクレジットであったり、現金振込みだったりもするが、クレジットの場合は当然ながら海外の決済代行が入って、サイトの審査を事実上免れていることが多い。
そのような決済代行に加盟店契約を結ぶアクワイアラーは、詐欺のお先棒を担いでいると評価できると思うのだが、その責任が法的に問われることはなさそうである。
さて、メールの相手がサクラであることの立証は、一般に困難ないし不可能と言われているが、上記の裁判例ではそうでもない。
欠席による擬制陳述だけでなく、国センに当該サイトがサクラを使っているのではないかと数多くの被害事例が寄せられていることも一つの手がかりとする判決がある。
あるいはそもそも、有料メール交換システムを使い続けて、有料メールのまま話を引き伸ばしたり、被害者が無料のメールにしようと言っても拒んだり、高額な課金を要するプログラムのダウンロードを促したり、そのような行動をすること自体が、通常の有料メール交換システム利用者として合理的な行動とは言い難いので、サイト運営事業者に委託されたり雇われたりしているサクラであることを推認させるものだとする例がいくつもある。
そしてその趣旨を最も明確に判示したのが、東京高判平成25年6月19日判時 2206号83頁、消費者法ニュース 97号383頁である。
この判決については、次の現代消費者法に評釈を掲載する予定なので、参考にしていただきたい。
なお、裁判例の中には、出会い系サイトの運営会社に対して仮差押をかけて本訴を提起し、認容されたものや、会社代表者に対して会社法429条1項に基づく損害賠償責任を追及して認められたものもある。
消費者被害回復例としては、いずれも参考になるところである。
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