consumer:集団訴訟、ベネッセの場合
ベネッセの情報漏えい問題については、既に訴訟によって損害賠償を求める動きが活発になっている。
集団訴訟、異例の規模に=訴状ひな型で個人も提訴-ベネッセ情報流出事件
これまで個人情報流出で訴訟に発展したケースでは、原告数は多くて十数人だった。一方、東京弁護士会に所属する弁護士が中心となって先月3日から呼び掛けているベネッセへの集団訴訟には、約2週間で日本全国から500件超の依頼が殺到。「問い合わせの電話が連日鳴りやまなかった」という。弁護団は近く東京地裁に提訴した上で、追加提訴も視野に入れている。
個人情報漏洩事件については、消費者裁判手続特例法の制定過程で、特定適格消費者団体による集団的消費者被害回復制度の対象とするかどうか最ももめた例の一つであり、結局、多数の訴訟提起を恐れる経済界が押し切って、対象とはならないということで決着がついた。
法文上は、明示されているわけではないが、慰謝料請求を除外していることから、事実上、個人情報漏洩事件については対象とならないと解される。このことは『消費者のための集団裁判~消費者裁判手続特例法の使い方』の78ページに説明してある。
しかし、それで訴訟が押さえ込めるかといえば、そうは問屋が卸さないというのが今回のベネッセケースである。
実際、弁護士さんが個人で提訴できるようにと訴状のひな形を示したりもしていた。→blog:ベネッセに対する提訴宣言
そして上記のような弁護団方式による集団訴訟である。
報じられている弁護士と同一かどうかは判断が出来ないが、被害者の会をウェブ上に立ち上げて加入を呼びかけているグループもある。
→ベネッセ個人情報漏洩事件 被害者の会
このサイトでは「皆様方の被害回復が重要な目的の一つですので、訴訟提起時の実費及び着手金を頂かず、損害金を回収した場合に初めて報酬及び実費相当額を頂く予定です」としている。
思うに、個人情報やブライベートな情報を集めて商売に利用するということは、それ自体がイケないことではない。しかし、集めた情報が今回のような内部犯行により漏洩することは、情報を利用する企業の責任において防ぐべきだし、防げなかった時にはその損害を償うべき立場にある。
人様の情報を商売に利用して儲けておきながら、その漏洩については責任を負わないというのは虫がよすぎるのである。
公害被害と同様に、原則は無過失責任とするべき立法が必要である。報償責任の観点からも、危険責任の観点からも、無過失責任立法をすべき根拠は十分だ。
そして、危険の分散は、結局のところ保険によるカバーで図るしかないのである。
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