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2014/11/05

consumer:原野商法の詐欺取戻し訴訟と消費者裁判手続特例法

原野商法の被害者が20年の時を経て、二次被害についての賠償を求める訴えを提起する。

原野商法、20年以上経て再び被害 集団提訴へ

記事によれば、「未来土地コーポレーション」(大阪市)や前身会社、関連会社から現金をだまし取られたとする人たちが、大阪の不動産業者らを被告に訴えを提起するため、準備を進めているということだ。

この会社はすでに警察に摘発されているので、被告となるのは会社自体ではなく実質的な経営者などだまし取った金銭を領得し、資力がある人たちなのであろう。

さて、この事例はもちろん個々の被害者が原告となり、弁護団を通じて損害賠償を請求する、いわゆる弁護団事件である。
原野商法の場合、一人当たりの被害額が数百万円に上るので、個別訴訟でもそれなりにペイするわけである。

すでに公布され、施行を待っている消費者裁判手続特例法による二段階訴訟にこのような事件が乗るのかといえば、個別訴訟でそれなりにペイするのであれば特に必要はないというのがアプリオリな答えだ。

もっとも、強いて特定適格消費者団体による提訴のメリットを探すなら、以下の諸点が挙げられる。

・共通義務確認の訴え提起の段階では、被害消費者には何の経済的負担もなく、提訴団体のリスクにおいて訴訟が追行される。
 もちろん、相当多数の消費者が共通の事実関係法律関係で被害を受けた事実は立証しなければならないので資料提供とかの労力は消費者にもかかってくる。

・損害賠償をすべき共通義務が確定判決なりなんなりで確認されると、第二段階での個別債権の確定手続も本格的な訴訟ではなく、簡易確定手続によることができる。手数料も安いし、提訴団体が取りまとめてくれる。

この二点において、個々の消費者は、自ら原告となるより敷居が低いものとなっているだろう。

また第一段階で仮差押も可能であるから、訴訟している間に財産が散逸するおそれも対処できる。

なお、問題点としては、上記記事では被告となる者が原野商法の詐欺にどう関わっていたのか必ずしも明らかでないが、共通義務を不法行為として請求する場合にも被告となり得る者は法律で限定されていて、それに当たるかどうかが微妙かもしないという点が挙げられる。

第二に、共通義務は欠席で擬制自白によりすぐ確定し、簡易確定手続も裁判所は簡単に認めてもらえるかもしれないが、被告・被申立人が徹底抗戦すれば、特に認否で否認し、簡易確定決定にも異議をいえば、結局第二段階は通常訴訟によらざるを得ない点である。

第三に、仮差押もできると書いたが、そのための担保をどうするのかは大きな問題で、通常の保証金を要求されたら最大のネックとなる。例えば請求金額の30%とかいう基準で保証金を定められ、これを対象債権の総額から計算されれば、上記記事によれば「総額約13億6千万円に上る」というのであるから、4億円近い担保を積まなければならないことになる。仮に歩留まりから10分の1、つまり3%としてくれたとしても4000千万円である。個別提訴なら、これを想定約5000人から集めるので、一人1万円以下、30%としても一人10万円以下ということになるが、共通義務確認の訴えでは特定適格消費者団体が自ら負担しなければならない。後に返ってくるお金とはいえ、団体に負担は絶対無理だ。
 さりとて上記の記事のような詐欺業者を相手にするのであれば、何もしなければ財産の散逸は必至というべきであろう。
 還付されるお金であることを前提に、行政庁の立替え負担制度が必須なところである。

第四に、これは個別提訴でも同様だが、想定5000人にも上る大規模な責任追及であれば、その一人一人の債権を確認し、証拠を揃え、身元も特定し、訴訟や執行により得られた金員を配当し、といった手順を確実に行う人手を誰がどうやって整えるか、代理人弁護士主導でやってもらって良いのか、それとも団体が責任を負う以上は団体が主体となるべきか、それは可能か、個別消費者への配当実務はまだまともに考えられていない。
 制度設計時は、破産手続をやったことがある弁護士さんが「できる」と言っているのをなんとなく当てにしているところがあったが、破産配当のような制度の裏づけはないし、他方で団体には公平誠実義務が課されていていい加減な処理はできないし、非常に不安である。

というわけで、制度は作ったということで満足していないで、実際に消費者被害の回復にワークさせようと思うのであれば、制度を動かす団体をサポートし、困難をなるべく除去するための施策が是非とも必要だと思われる。

この必要性に対して、(特定)適格消費者団体の自力でやるべきで行政に頼るのは甘えだというような批判は当たらない。集団的消費者被害救済制度は法政策として必要性を認めた制度であり、特に上記記事にあるような悪質商法の被害救済の必要は異論のないところで、被害救済が実際にワークすることは社会的利益ないし公益に資するものだからである。
例えば仮差押の保証金を公的に立て替える制度を作るというのも、特定適格消費者団体のためにやるのではなく、悪質商法からの被害救済という社会の利益のためにやるのであり、それはひいては悪質商法を駆逐して健全な市場経済を発展させるためでもあるのだ。

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