misc:略語か符丁か
権利能力なき社団のことを「権能なき社団」と略する文書に接し、それはおかしいだろうとFBなどに書いたら、反響があった。
権能という言葉は別にあるので、そのように略したら誤解も招くのではないかというのがツッコミの趣旨だった。現に、北大リサーチジャーナルに掲載された論文では、一箇所で「権能なき社団」と使われていて、他方で「権能」と普通の意味でも使われている。
しかし、ちょっと考えてみると、そういう誤解を生じかねない略し方は他にもある。
例えば、消費者法の世界ではショウケイ法といえば消費者契約法を指す。景表法や特商法、割販法と、三文字に略すのが好きな世界である。だが、一般にはショウケイ法といえば、何か事業の引き継ぎをする方法みたいな承継法を思い浮かべることだろう。
これは同音の別の言葉と紛らわしいレベルで、字で書けば紛らわしくはないのだが、その点で権能の方がもっとひどい。また権利能力と権能とは決定的に違うが、似たようなところもあるので、余計に紛らわしい。
他にも色々略すことはあって、部外者にはよく分からないものが多い。
刑法の先生は「原自」行為というのが「原因において自由な行為」という意味だと分かるらしい。
裁判の実務家は普通に「弁準」といって、「弁論準備手続」の意味で使う。
その他、法律の名前は適当に略すし、実務も略すことが多い。
ほとんどジャーゴンというべきか。
ま、ともかく、一晩SNSでのやり取りを経て、権能なき社団という略し方もアリかなぁと思い返したところだった。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント