law:市役所と家裁の連携
日本でもこうした動きがあることを、改めて確認できて嬉しい。
「市民裁判所を市役所の中に作りたい」 明石市長「行政と司法の連携」訴える
見出しから受ける印象は、下記の本で提言や紹介をしているところと共通するものだが、行政の側の意欲があふれていて明るい気分になる。
記事で紹介されている施策は次の通り。
・離婚する夫婦を対象に、子どもの養育費や面会交流などの取り決めを促す「こどもの養育に関する合意書」の配布
・元家裁調査官たちによって作られた公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)の相談員による「こども養育専門相談」を、市役所の本庁舎で毎月1回実施
・離婚する夫婦に対して、面会交流やその後の成長について記録する「養育手帳」を配る予定
・市庁舎を面会交流の場として提供する予定
・「無戸籍」になった人たちの相談窓口も設置する予定
明石市の泉市長は「行政と司法が連携してこそ、できることがたくさんある」と述べ、「ADR(裁判外紛争解決手続)機関として、明石市民裁判所を市役所の中に作りたい。もっと司法にアクセスしやすくしたい」と述べたそうである。
これに対して識者からは、家裁の過重負担に対して行政庁との連携の重要性を指摘する声が寄せられている他、金澄弁護士はちょっと慎重な意見を、次のように述べている。
「市役所で相談やガイダンスを実施して、当事者同士で対応できるのか、DVのおそれがないのかなどを振り分けができる仕組みが大切だ。その中に弁護士が入っていくことも必要になる。弁護士会が相談窓口を作って待っているだけでは、市民との距離は縮まらない」
上記の書籍の中では、DV対策にスポットを当てての話だが、日本の行政の取り組みについて先進事例も含め、手島先生と松村先生の論稿が紹介と分析、問題点の指摘をしている。
また諸外国の調査結果もレポートしているが、いわゆるワンストップサービスが取り上げられている。その後の研究で韓国の取り組みやニューヨークのファミリージャスティスセンターの視察なども行っており、諸先生の研究成果があちこちで公表されている。
これらによれば、家庭裁判所と行政との連携も重要だが、警察や検察と行政との連携による例も諸外国ではかなりある。やはり家裁には裁判所としての限界があり、特に被害が切迫するDV対策には警察に期待すべき役割が大きい。
その点、上記の明石市の取り組みはDVにスポットを当てているわけではないので、ダイレクトに家裁が出てきているが、金澄先生が指摘するように、DVなどの問題を含んだ事例も出てくることを考慮した工夫が必要である。
| 固定リンク
「明るい法律の話題」カテゴリの記事
- Book:裁判官三淵嘉子の生涯(2024.05.30)
- ダルク宮古島訪問(2023.03.25)
- カルタヘナ法とは(2023.03.09)
- Book:ルールの世界史(2023.02.03)
- もしも基本的人権の尊重がされなかったら(2021.05.03)
コメント