サンテミリオンの法域=Juridiciton
ボルドーワインの銘柄として著名なSaint-Emilionは、世界遺産にも登録されている。
その登録名が Juridiction de Saint-Émilionであり、観光案内所にもその記載があった。なぜこのJuridictionという単語を使うのかなぁと不思議であった。
というのも、この単語、フランス語では管轄権とか裁判所と訳すのが普通であり、英語のJurisdictionになると管轄区域、あるいはもっと色々な意味を込めて「法域」と訳される。
例えば、今独立が騒がれているスコットランドとか、マン島とか、北アイルランドとか、ジャージー諸島とかは、イングランドとは別個の法と裁判所をもつ領域であり、「法域 jurisdiction」と称される。
サンテミリオンもそうなのであろうか?
ウィキペティアやその他のネット上の表示では「地域」という酷い訳をあてられているが、特にウィキペティアには「登録名に用いられたjuridiction (jurisdiction) は中世の裁判権や管轄権のことであり、12世紀にイングランドに支配されていた時期に遡る地域区分である。そのため、「サン=テミリオン管轄区」などと訳されることもある。」記載されていた。
これをもう少し詳しく言うならば、1199年にイングランドのジョン王(失地王)がアキテーヌ公爵との間でサンテミリオン地域の住民に自治共同体の設立を認め、特権と慣習上の自由を付与したことが、その意味である。
こうした共同体には、Juradeという言葉も用いられている。これはボルドー市など、フランス南西部の、つまりアキテーヌとイギリスが支配した地域に用いられるようだ。
さて、この自治共同体には裁判権、外交権、警察権、防衛権、一般行政権および徴税権が付与されていたので、まさしく地方小政府ともいうべき存在であり、アンシャン・レジームの間もその存在は認められており、革命まで存続した。
というわけで、Juridiction de Saint-Émilionは、やはりサンテミリオン法域と訳すのが良いと思う。
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