学術書を紙と電子のHybridで
新刊学術書、今後は紙・電子セット販売、有斐閣など6出版社が図書館向けに
これは素晴らしいことで、図書館書籍へのアクセスを飛躍的に便利にするとともに、図書館のスペースの悩みにも特効薬となりうるかもしれない。
しかし、電子書籍のみの「購入」に踏み切ってよいかどうかは慎重に考慮が必要だ。
参加する出版社は、慶應義塾大学出版会、勁草書房、東京大学出版会、みすず書房、有斐閣、吉川弘文館。電子書籍の配信は、京セラ丸善システムインテグレーションが提供する貸出・返却型電子図書館プラットフォーム「BookLooper」と、丸善が提供するウェブアクセス型電子書籍閲覧サービス「Maruzen eBook Library」を通じて行う。
現在のところ、電子書籍の最大の難点は、データをいつでも読むことができるという保証がないという点だ。
図書館が、書架不足に困って、電子書籍の「購入」に踏み切り、数年か数十年かたった後、買ったはずの学術書を上記のサービスで読み出すことが可能であり続けるか、甚だ疑問だ。
読んで消費される類の本と異なり、学術書はその寿命が極めて長い。数年、十数年のスパンで参照されるのは当たり前だし、長いものでは数十年、古典的価値があるとなれば百年を超えて参照され続ける。
何百年の時を超えて参照されるのは、ニュートンのような知の巨人の場合だけではない。凡百の記述でも、いわゆる史料として貴重な情報を後世に伝えることはありうる。
そのような数十年、数百年といった長期に渡る図書の安定的な所蔵と閲覧機会の提供が図書館の使命である。その図書館に紙であれ電子であれ本を売るということは、やはりその長期的スパンでの利用を保証するということでなければならない。
その覚悟が電子書籍の提供者に果たしてあるかな?
XP騒動を思い起こしても、せいぜい数年しか保証しないのが当たり前という世界ではないかな?
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