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2014/09/24

HeForSheキャンペーンとエマ・ワトソン

国連がHeForSheというキャンペーンを始め、国連の女性親善大使であるエマ・ワトソンがスピーチをした。

日本語訳掲載ページがある。

フェミニズムとしい言葉は、彼女によれば、好ましくないイメージを与える用語のようで、フェミニストは魅力的でないというイメージを保たれる女性を指すと言ってます。
なぜ、そんな意味合いを持ってしまったのか、彼女自身フェミニストと自己規定していて、大事なのは言葉ではなくその背後にある思いだとしている。

フェミニズムは男性と女性との等しい権利と機会の保障を求める考え方だとすると、男性の問題でもある。男性らしさに息苦しさを感じる、あるいは父親としての役割を不当に奪われたり低い評価をされたりすることの問題性も、フェミニズムから浮かび上がる。

女性の教育の機会、あるいは労働に対する賃金水準など、是正されるべき不平等はたくさんある。その不平等の解消に向けて、声を上げ、行動する人たちであってほしい、と彼女は呼びかけた。

さて、日本の現状はどうか。安倍首相はその国連に行って、あちこちで日本政府が女性登用政策を進めていると自慢して回っていることだと思う。そして史上最多タイの女性閣僚数を、政調会長も入れれば史上最多だといって胸を張る。

しかし、その女性閣僚たちがフェミニズムに対して極めて疑問の多い言動で知られる人たちであったということは、Politique:第二次安倍内閣の女性閣僚関連記事で記憶にとどめたところだ。

それはともかく、彼女の冒頭の言葉で、フェミニズムという言葉が評判悪くなってしまったという嘆きは、日本でも全く同様で、日本の場合はさらに進んで「人権」という言葉も低い評価のように用いられる。
例えば「人権屋」とか「人権派弁護士」といった用法だ。
人権屋という言葉は、人権を盾にとって金を恐喝する輩、みたいな使われ方だ。もちろんそう言われるに値する連中がいることは否定しないが、人権を主張することが常に無理押しとか横車とか言うわけではない。むしろ、人権は第一に尊重されるべき価値の目録である。

また人権派弁護士という言い方も、基本的人権の擁護は弁護士法が規定する弁護士の基本的使命の一つであり、論理的には本来の弁護士のあり方である。
弁護士法1条

弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。

そしてジェンダーフリーとか、ジェンダー教育といった言葉にも、日本社会にはことのほかアレルギーを示す人が多いのも事実である。
日本のこの問題、すなわちバックラッシュ問題について頼りになるのが荻上チキ氏の「ジェンダーフリー&バックラッシュ騒動まとめ」である。
ジェンダーフリーということを男女の同室着替えとかフリーセックスの奨励などと曲解して、これに攻撃を加える動きが高まってきたのだが、その先頭に立ってきた一人が上記の女性閣僚の一人、山谷えり子大臣であった。

そして自民党過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチームという組織があり、その座長が誰あろう安倍晋三であり、山谷えり子が中心人物であったが、男女共同参画局の平成17年男女共同参画基本計画に関する専門調査会に提出された資料PDFには、ジェンダーという言葉の否定的イメージが溢れかえっている。

男女共同参画基本計画に関する専門調査会(第13回)議事録には、この自民党PTで出された意見とそれに対する検討が記されている。

男らしさ・女らしさの伝統的なあり方を大事にするという基本姿勢が安倍・山谷率いる自民党的考え方だとすると、上記エマ・ワトソンのスピーチは、彼らの賛同するところではあるまい。

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