DV被害者保護措置に関する世田谷区の行い
基本的にはミスがあったという困った事例だし、記事見出しはひどく批判的なのだが、その後の対応も含めて考えると、ミスは全くなくなることはないものだし、むしろ望ましい振る舞いをしていると評価できるのではないか。
記事中の事実関係は以下のとおり。
六月二十三日、烏山総合支所の窓口を訪れた加害者に、申請に基づいて女性の戸籍付票の写しを交付した。 職員は同日中にミスに気づいて上司に相談。区は女性と警察に連絡し、DV被害者を受け入れるシェルターに一時保護した。その後、女性は別の場所へ引っ越した。区は女性に謝罪し、転居費用全額の十九万三千八百二十円を負担した。
ミスはしないに越したことはないのだが、ミスに気づいた職員が直ちに上司に相談し、区として適切な対応をとった上、損害賠償もしたというのであるから、きちんとしたものである。
ミスをしたことが分かったら、その隠蔽に走る警察・検察とか自衛隊とか(の一部?)とは大違いである。
加害者本人が窓口に来たのに本人からの申請と誤解したという点に少々曖昧さが残されているが、その点も含めて、エラー集・ヒヤリ・ハット事例集など作成して研修に役立ててもらいたい。
この記事では更に興味深い数字が明らかになっている。
区内には三月末時点で、住民票の交付制限がかかる人が九百四十八人、戸籍付票の制限がかかる人が七百十一人いる。区はミスを受け、戸籍係や各出張所ごとに複数の責任者を配置するなどの対策をとるという。
また、機械の対応として、戸籍付票などを呼び出す専用端末に「処理注意者が存在する」「支援措置の対象者」などの警告表示が出るとも書かれているので、ミスが起こる可能性はずいぶん少なくなっていることだろう。それでもなお、「そんな制度はない」と申請者に説明して追い返してしまう職員がいたりするのだが、息の長い、そして窓口担当者だけではなく全職員に行き渡るような研修が必要ということである。
記事の中で世田谷区に一つ苦言を呈するとすれば、「窓口業務の研修の際に注意を喚起する」というのだが、窓口業務に直接当たらない職員も含めた研修と、例えばポスター等で制度の存在を啓発する必要、それは区民のみならず職員に向けても啓発する必要が、あるのではなかろうか。
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