consumer:子どもの無思慮に乗じた商売はまともじゃない
子どもは、お金を遣うことの価値とかがよく分かっておらず、また善悪の分別も身につける途上にあり、大人の世界で悪いことを子どもがしても、教育こそ必要であって、責任を問うことはできない。
子どもと言っても年令によるだろうが、少なくとも小中学生辺りの無分別・無思慮に対しては教育をもって対処すべきだということ、これは常識といって良い。
そこで民法も、未成年者の法律行為は原則として取り消すことができるとしている。取り消されれば、未成年者と取引した相手が受けた利益は返還しなければならない。例外は多々あるが、成年擬制や保護者が同意していたというのを除けば、詐術を使って成年と信じさせたりで、それはそれで問題があるのだが、民法の規定の他にクレジットカード取引の場合の約款で、子どもが親のカードを無断使用した場合でも親が当然に責任を負うとするものがある。
これについて、アメリカの動きが報じられている。
米グーグルも19億円返金=子供の無断購入問題
FTCがグーグルに対して、グーグルプレイを舞台とした子どもによる親のカードの無断使用、特に一旦認証をしたら30分は再認証することなく取引ができるという穴を利用した無断使用について、それによる売上を返還するよう求めたというもので、FTCとグーグルとが1900万ドル(約20億円)の返金に合意したというのである。
同様の返金は、アップルも3250万ドルを返還することでFTCと合意しており、アマゾンは違法でないと頑張ってFTCから提訴されている。
日本では、全く同じケースではないが、親のカードをオンラインサイトで無断利用した子どもの行為について、カード会社もゲーム会社もアップルやグーグルも、必ずしも素直に返金を認めるわけではない。子どもが親の同意を得ていたというボタンをクリックしたことで、子どもが詐術を用いたとして取消権を否定することがある。
これに対する経産省のいわゆる電子商取引準則は、結構厳しく詐術が成立する場面を絞っているが、それでもまだオンラインでの確認や警告をすれば良いということになっており、年端の行かない子どもがゲームしたさに行う行為を詐術と評価して良いというところは残っている。
これに対する冒頭に述べたような観点からの是正は、子どもと親とが裁判等を通じて粘り強く主張していくしかない。しかし裁判官もネット取引に妙な理解がある人が多く、子どもがわざわざ騙すことができるような仕組みを作って取引に供している事業者の側に、妙に寛容な場合がある。つまり子どもの行為に厳しく当たるわけだ。
アメリカとは実体法も異なるので、アメリカでどうというのが直ちに日本でどう考えるかを左右するものではないが、ともあれ、アメリカではFTCという政府機関の裁判を通じた主張立証により、子どもの無思慮無分別に乗じた商売が是認できず、それによって得られた儲けを返還しなければならないことが確認されているというわけである。
それに引き換えわが国では、子どもの無思慮無分別に乗じて金を巻き上げる商売がまかり通っているところ、全く情けないというべきだ。
なお、子どもの場合は取引額に上限を設けたり、あるいは親の意思確認をメール等でその都度とるなどの工夫をしている場合には、まともな商売ということができる。問題はそのような良心的な商売をしている事業者が儲けを減らし、そのような親のコントロールを利かさない形で子どもから金を巻き上げる事業者が肥え太ることになる構造があることだ。
これを塞ぐには、立法による介入しかないと思われる。
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