Book:子ども虐待としてのDV
弁護士会館地下の本屋に行ってたまたま見つけた本書は、表題が子どもの問題となっているが、子どもだけの問題を取り上げているわけではない。
二部構成となっており、第一部はDVの現実を著者たちの臨床体験から赤裸々に描き、法制度にも言及している。
第二部は、心理臨床的援助の実際と題し、DV被害を受けた母子の心理療法を詳しく解説している。
被害者に接する人々、あるいは心理的ダメージに詳しい人々にはあたりまえのことかもしれないが、DV被害者やそれを目撃することで心にダメージを受ける子どもたちが、何年もたってからその悪影響を表に出すことがある。
DV加害者から逃げて、別居した当時は外見上しっかりしているように見えても、暴力に対する恐怖を感情に表すことができるようになるまでも時間がかかるのであって、当初は恐怖に反応ができない状態ということもありうる。それを外見上から大したことはないと素人判断してしまうことは、被害者に対する適切なケアができない。
さらには、子どもについても、直接の暴力被害者というわけではない子どもが感情を素直に出すことができない状態におかれ、様々な症状を呈する様が解説されている。
これに対する治療法も、詳しく紹介されている。
本書はまだ面接交渉と言っていた時代のものであり、離婚後の非監護親による面会交流が常態化とDVの問題については必ずしも言及されていない。これは今後の課題である。
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